円形脱毛症|疾患情報【おうち病院】
記事要約
円形脱毛症とは突然、頭部に円形の脱毛斑を生じることです。円形脱毛症の原因・症状と治療方法・改善対策を解決
円形脱毛症とは
突然、頭部に円形の脱毛斑を生じます。単発のことも多発することもありますがmひどい場合には脱毛斑が癒合してびまん性の脱毛となり、眉毛やひげにも脱毛を生じ汎発性脱毛症へと移行することもあります。
原因
毛を作る毛母細胞が何らかの原因によって障害されることで発症します。栄養障害説、遺伝説、ストレスの影響も考えられますが、自己免疫の問題で本当の原因は不明です。他の自己免疫疾患に合併することもあります。
疫学的整理
皮膚科疾患の中で2〜5%との報告もあり、頻度の高い疾患です。多くは30歳までに発症し、性差はありません。
症状
代表的な病型は次の4つがあります。
- 通常型:単発または多発する脱毛斑
- 蛇行型:頭髪の生え際のみ脱毛
- 全頭型:頭部全体の脱毛
- 汎発型:頭髪のみでなく全身の脱毛
前駆症状や自覚症状なく、突然に境界明瞭な脱毛斑が出現する。直径は2〜3cmの円形ないし卵円形で、通常は単発だが多発したり、全頭型、汎発型に移行することもあります。
また、爪の剥離、粗造化、混濁、点状陥凹などをみることがあります。
診断の方法
症状からの診断は比較的容易です。典型的な脱毛斑は境界が比較的はっきりしていて、皮膚には発明や鱗屑(皮膚のカサカサした付着物)を認めません。
頭髪以外には、重症になると眉毛、睫毛、ひげ、体毛など全身のあらゆる部位の毛が脱落する汎発型となります。
ダーモスコピーで観察すると、感嘆符毛(根本が細い短く切れた毛)をみることは特徴です。
抜毛テストは脱毛を生じている部位の辺縁の毛を引っ張ってみて、容易に抜けるかどうかを診る検査です。容易に抜ける、易脱毛性がある場合には、病変がまだ拡大している状態であるということが言えます。
重症度の判断
重症とは、頭部全体の面積に占める脱毛巣面積の割合が25%以上に及ぶ状態です。
病期
進行期:発症3〜6か月で脱毛巣内外に易脱毛性(毛を引っ張ると容易に抜ける状態)があり、感嘆符毛を多数見る状態
症状固定期:発症6か月以上で拡大傾向なく、脱毛巣内外に易脱毛性を認めない状態
鑑別診断
鑑別疾患として以下のものがあります。
トリコクロマニア(抜毛症):小児に多く、脱毛巣内に短く切れた硬い毛がみられます。病的な毛は見られず、病変周囲の毛は簡単には抜けません。
外傷性脱毛:牽引などの外的な要因によって脱毛したもので、脱毛斑は円形ではなく色素沈着を認めることもあります。
このほか、脱毛を生じる疾患として、頭部白癬、梅毒性脱毛、慢性円板状エリテマトーデスなどのほか、先天性皮膚欠損症、脂腺母斑などの先天性疾患が挙げられます。
合併する疾患
アトピー性皮膚炎や様々な自己免疫性疾患を合併することがあります。
症状の程度や経過により、甲状腺機能や全身性エリテマトーデスなどの膠原病のスクリーニング検査を行います。
治療
ガイドラインでは、年齢(成人16歳以上、小児15歳以下)、重症度(重症、軽症)、病期(進行期、症状固定期)を考慮してアルゴリズムが作成されています。これを参考にしつつ、重症度や持続期間に関わらず生活の質を低下させる疾患であることに留意して、個々の患者さんにとって最適な治療を選択する必要があります。
1)治療方針の目安
- 軽症で進行期:外用療法やステロイド以外の内服療法
- 軽症で症状固定期:ステロイド局注や局所免疫療法
- 重症で進行期:ステロイドパルス療法やステロイドを含む内服療法
- 重症で症状固定期:局所免疫療法
*小児ではステロイド全身投与、ステロイド局注、PUVA療法は行わない
2)局所療法
- ステロイド、塩化カルプロニウム、ミノキシジル
- ステロイド局注療法
- 局所免疫療法:症状固定期の第一選択。調整した試薬(squaric acid dibutylester:SADBE, diphenylcyclopropenone:DPCP)を局所に塗布することにより発毛を促しますが、使用する薬剤が医薬品ではなく保険外診療となるため、限られた施設で患者さんから書面での同意を得た上で行います。
3)全身療法
軽症:セファランチンやグリチルリチン製剤の内服
重症かつ進行期(成人のみ):ステロイドパルス療法、ステロイド内服療法
4)その他の治療法
液体窒素による冷却療法、近赤外線照査法、PUVA療法まども併用療法として用いられます。
生活指導
日常生活に制限はありません。一般にいわれている精神的ストレスとの関連性については科学的な根拠は乏しいです。精神的ダメージは大きく、軽症であっても社会生活などに影響している場合があることも念頭において対応が必要です。