メニエール病とは|疾患情報【おうち病院】
記事要約
メニエール病とは?原因・症状と治療方法・改善対策などを解説
メニエール病とは
メニエール病とは、回転性めまい、耳鳴り、難聴を特徴とする疾患で、内耳に内リンパ水腫が見られ、症状を引き起こすと考えられている。しかしながら、この内リンパ水腫の原因はアレルギーや自己免疫、ウイルス感染など、複数の可能性が指摘されているものの、未だ特定の原因は不明で、複数の因子が関与している可能性がある。また、精神的ストレスや過労などが誘因となって症状が繰り返されることが多い (京都大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科, 2016[1])。
原因
内耳に内リンパ水腫が見られ、症状を引き起こすと考えられている。しかしながら、この内リンパ水腫の原因はアレルギーや自己免疫、ウイルス感染など、複数の可能性が指摘されているものの、未だ特定の原因は不明で、複数の因子が関与している可能性がある。
相談の目安
特徴的症状である、めまい、耳鳴り、難聴のいずれも多くの鑑別診断を有する症状であるため、いずれかの症状が持続する場合や、急速に進行する場合には医療機関を受診することが望ましい (Mayo_Clinic, n.d.[2])。
疫学的整理
どの年代にでも発症しうるが、有病率は30歳から50歳で多い。女性に多く、小児では発症しにくい。症状は数年にわたって繰り返し発することがある (京都大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科, 2016[1])。
海外動向
診断基準が様々であるために、発症率を特定するのは難しいが、10万人あたり10-150例、有病者の中では両側性に発症するのは10-50%とされている (UpToDate, 2020[3])。
症状(潜伏期間・感染経路等)
典型的な三徴(回転性めまい、耳鳴り、難聴)が連動して起きる。めまいは突然、回転性のめまいで発症し、20分から数時間持続する。24時間以上持続することはない。激しいめまいの場合、吐き気や嘔吐、平衡感覚を失うことがある。耳閉感を伴う耳鳴りと、低音部が聞こえにくいタイプの難聴が起きる。症状を繰り返すうちに中高音の難聴へ進行することがありえる。初期には難聴は間欠的に出現するが、多くの場合、慢性的な難聴へと移行する。また、これらの症状はすべてそろわないこともあり、めまいのみ、耳鳴りだけの症状が出ることもある (Mayo_Clinic, n.d.[2])。
重症化しやすい場合
メニエール病は原因が特定されていないことから、治療が困難になることもある。症状出現に伴い、内リンパ水腫を認めることから、利尿薬にて改善を図る。そのほか、ステロイドなどが治療に用いられる。また、精神的ストレスが誘因となることから、抗不安剤を使用するが、慢性的なストレスのある場合には長期化することがある。薬物投与で改善が見られない場合には、内リンパ腫の改善や前庭神経の切除のため、手術療法が適応になることもある。
再発防止対策
再発が多く、数年にわたって症状を繰り返す例も多いが、発作を減らし、難聴の進行を抑制することが重要である。まず、誘因となりうる精神的ストレスや肉体的な疲労を軽減するよう、十分な睡眠と良質な食事をとるよう心掛ける。塩分を多く含む食事は内リンパ腫を増悪させる可能性があり、好ましくない。ジョギングなどの有酸素運動も定期的に行う。
発作が再発した場合、めまいによって平衡感覚を維持できないこともあるため、注意が必要である。まず、メニエール病の発作の兆候が現れた場合には、 (NHS, 2020[4])
- めまい治療薬を内服する。
- 座る、もしくは横になる
- 目を閉じて正面を見つめるようにする
- 急に頭を動かさない
- 移動する場合にはゆっくり慎重に体を動か
診断の方法
複数の検査を症状に合わせて行い、診断基準と照合して診断する。
- 聴力検査:中低音の聴力を評価する。
- グリセオール検査:利尿薬の投与によって聴力が‘改善するかを評価する
- 蝸電図検査:電極を用いて内耳の機能を評価する
- 眼振検査:めまい発作時の眼振の様子を評価する
【メニエール病 診断基準】 (診断基準化委員会, 2017[5])
症状
- めまい発作を反復する
- めまい発作に伴って難聴、耳鳴、耳閉感などの聴覚症状が変動する。
- 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない
検査所見
- 純音聴力検査において観音性難聴を認め、初期にはめまい発作に関連して聴力レベルの変動を認める。
- 平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性または水平回旋混合性眼振や太平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。
- 神経学的検査においてめまいに関連する第Ⅷ脳神経以外の障害を認めない。
- メニエール病と類似した軟調を伴うめまいを呈する内耳・後迷路性疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性疾患など、原因既知の疾患を除外できる。
- 聴覚症状のある耳に造影MRIで内リンパ水腫を認める。
〔診断〕
メニエール病確定診例:A症状の3項目を満たし、B検査所見の5項目を満たしたもの。
メニエール病確実例:A症状の3項目を満たし、B検査所見の1-4の項目を満たしたもの。
メニエール病疑い例:A症状の3項目を満たしたもの。
診断の難しさ
特徴とされている症状の、めまい、耳鳴り、難聴、いずれも多くの疾患を原因として出現することがあり、また、同時に症状が出そろわないことも多いことから、診断は困難な場合がある。特にメニエール病の初回発作時には、めまいを伴う突発性難聴と鑑別できないケースも多く、発作が反復することによって確実例と診断されることもある (診断基準化委員会, 2017[5])。また、めまい症状を起こす症状のうち、メニエール病と同様に内耳に異常をきたしている疾患も存在することから、鑑別診断は重要である。
メニエール病は2015年までは難病指定されていたが、現在では対象外となっている。しかし、聴覚野平衡障害の程度によって、障碍者手帳の交付などのサポートを受けられる可能性があり、最寄りの福祉事務所や障害福祉窓口で相談可能である (LITALICO, 2019[6])。