後天性赤芽球癆|疾患情報【おうち病院】

記事要約

後天性赤芽球癆とは、正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著しい減少を特徴とする血液疾患です。国の指定難病の1つで、現在日本では約818名の方が、難病指定を受け治療を受けています。この記事では後天性赤芽球癆の原因、治療などについて医師監修の基解説します。

後天性赤芽球癆とは

赤芽球癆は正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著しい減少を特徴とする血液疾患です。赤芽球癆では骨髄における造血幹細胞の増殖や分化の障害によって、赤血球系のみが減少し、重症の貧血を呈します。
通常、白血球数と血小板数は正常に保たれます。先天性と後天性があり、先天性赤芽球癆には、ダイアモンド・ブラックファン貧血(Diamond-Blackfan anemia ; DBA)があります。後天性は臨床経過から急性と慢性に区分されます。

後天性赤芽球癆の原因

後天性赤芽球癆には、原因を特定できない特発性赤芽球癆と、何らかの基礎疾患に伴う続発性赤芽球癆があります。
続発性赤芽球癆の原因となるものとしては、胸腺腫、リンパ系腫瘍(大顆粒リンパ球性白血病や悪性リンパ腫など)、固形腫瘍、リウマチ性疾患、ウイルス感染症(ヒトパルボウイルスB19など)、薬剤性などが挙げられます。頻度はまれですが、妊娠に伴う赤芽球癆も報告されています。

後天性赤芽球癆の疫学的整理

後天性赤芽球癆は国の指定難病の1つで、現在日本では約818名の方が、難病指定を受け治療を受けています。

後天性赤芽球癆の症状

貧血による症状が主体で、易疲労感、倦怠感、動悸、顔面蒼白などです。続発性赤芽球癆の場合には、基礎疾患による症状がでることがあります。

後天性赤芽球癆の診断

  • 臨床所見として、貧血とその症状を認め、易感染性や出血傾向の症状は認めないとき。
  • 以下(1)~(3)の検査所見を認めるとき。
    (1)血中ヘモグロビン濃度が10.0g/dL未満の貧血
    (2)網赤血球が1%未満
    (3)骨髄赤芽球が5%未満
  • 基礎疾患による場合を除き、以下(1)~(2)の検査所見は原則として正常値の場合。
    (1)白血球数
    (2)血小板数

上記所見にて、赤芽球癆と診断し、病歴と身体所見・検査所見によって、以下に記した先天性赤芽球癆及び続発性赤芽球癆を除外できた場合、確定診断に至ります。

  1. 先天性赤芽球癆(ダイアモンド・ブラックファン貧血など)
      (少なくとも乳幼児期には貧血の所見を認めない。)
  2. 薬剤性赤芽球癆
      (エリスロポエチン製剤、フェニトイン、アザチオプリン、イソニアジドなどが原因)。
  3. ウイルス感染症(ヒトパルボウイルスB19、HIVなど)
  4. 胸腺腫
  5. 骨髄異形成症候群・造血器腫瘍
  6. リンパ系腫瘍(慢性リンパ性白血病、悪性リンパ腫など)
  7. 他の悪性腫瘍
  8. 膠原病・リウマチ性疾患
  9. 妊娠

後天性赤芽球癆の治療

診断を受けたときに貧血が重篤で日常生活が障害されているときには、赤血球輸血が行われます。
薬剤性赤芽球癆が疑われる場合には、原因薬剤として疑わしいものは中止する、もしくは他の薬剤に変更して約1か月間経過観察します。この経過観察中に赤芽球癆の原因を見つけるための検査が行われます。赤芽球癆の原因となる病気が見つかった場合にはそれに対する治療を行います。

赤芽球癆の原因となる病気の治療により貧血が改善しない場合と、基礎疾患が見つからない特発性赤芽球癆の場合には、免疫抑制療法が行われます。免疫抑制薬としては、シクロスポリン、副腎皮質ステロイド、シクロホスファミドなどが用いられます。治療が奏効しない場合には、赤血球輸血が継続され、輸血後鉄過剰症の予防と治療のために、除鉄療法(鉄キレート療法)が行われます。

後天性赤芽球癆の相談の目安

疲れやすい、体がだるい、動悸がする、顔が青白いなどの症状がでたときは、血液内科や内科の受診をお勧めいたします。

<リファレンス>

難病情報センター 後天性赤芽球癆(指定難病283)
小児慢性特定疾病情報センター 後天性赤芽球癆

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