急性膵炎|疾患情報【おうち病院】

記事要約

急性膵炎とは、膵液に含まれる消化酵素により自らの膵臓が消化されてしまった状態です。何らかの原因で、膵液が膵内で活性化されると、膵臓が消化され、急性膵炎を生じます。急性膵炎の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

急性膵炎とは

膵液に含まれる消化酵素により自らの膵臓が消化されてしまった状態が急性膵炎です。
膵臓には大きく分けて2つの働きがあり、1つはインスリンやグルカゴンという体内の血糖値を調節するホルモンを作る内分泌という働き、もう1つは膵液という消化酵素を作る外分泌という働きです。膵液は膵管という管を通って十二指腸に分泌され、はじめて消化酵素として活性化し、食べ物を消化します。何らかの原因で、膵液が膵内で活性化されると、膵臓が消化され、急性膵炎を生じます。

急性膵炎の原因

急性膵炎の原因として多いのは、飲酒によるアルコール性(約35%)と胆石(約30%)です。その他、医原性(内視鏡的乳頭処置、手術など)、膵損傷(腹部外傷)、慢性膵炎旧姓増悪、膵管癒合不全(先天的な膵臓の形の異常)、脂質異常症、副甲状腺機能亢進症、膵腫瘍、自己免疫性膵炎、薬剤、感染(ムンプス、マイコプラズマなど)、遺伝性膵炎などが原因の場合もあります。
小児の急性膵炎の場合、ウイルス感染症(ムンプス)、薬剤(L-アスパラギナーゼ:白血病治療薬、ステロイド、アザチオプリン)、上腹部打撲などの外傷(乳幼児虐待)、先天性胆道拡張症、膵・胆管合流障害などが主な原因として挙げられます。

急性膵炎の疫学的整理

急性膵炎の発症者は、日本で年間約35000人で、女性は70歳代、男性は60歳代の方が多く、男女比は男性:女性=2:1です。原因別に、アルコール性は男性に多く、胆石症・特発性は女性に多いとされています。

急性膵炎の症状

急性膵炎で最も多い初期症状は上腹部の激痛です。臍から心窩部周囲に起こり、次第に腹部全体に広がります。仰向けで痛みが強くなり、側臥位や膝を抱えて身体を丸くすると痛みが和らぐこともあります。高齢者や合併症のある重症な場合では腹痛の訴えがないこともあり、腹痛の強さと膵炎の程度は相関しないことも多いです。その他、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、食欲不振、発熱などの症状もあります。

急性膵炎の診断

急性膵炎が疑われる場合は、まず血液検査、腹部超音波検査、Ⅹ線CTなどの検査を行います。さらに膵炎の原因や重症度などによっていくつかの追加の検査が必要になります。
血液検査では、アミラーゼ、リパーゼなど膵消化酵素や白血球数、CRPなどの炎症反応の値で高値になり、胆石による膵炎の場合、肝胆道系酵素(AST、ALT、γGTP、ALP、T.Bil)が高値となる場合もあります。

急性膵炎の重症度分類

急性膵炎の重症度判定基準に照らし合わせてスコアリング(表1)し、さらに点数の合計で重症度の分類(表2)を行います。

 

重症度判定基準

重症度スコア

予後因子①

ショック

呼吸困難

神経症状

重症感染症、出血傾向

Ht≦30%

BE≦-3mEq/L

BUN≧40mg/dL

(もしくはCr≧2.0mg/dL)



 

各2点

予後因子②

Ca≦7.5mg/dL

FBS≧200mg/dL

PaO2≦60mmHg

LDH≧700IU/L

総蛋白≦6.0g/dL

プロトロンビン時間≧15秒

血小板≦10万/mm3

CT Grade Ⅳ/Ⅴ



 

各1点

予後因子③

SIRS診断基準における陽性項目数≧3

年齢≧70歳

2点

1点

(表1)厚生労働省 急性膵炎の重症度判定基準

SIRS診断基準項目:
(1)体温>38または<36℃
(2)脈拍>90回/分
(3)呼吸数>20回/分またはPaCO2<32mmHg
(4)白血球数>12,000/mm3もしくは<4,000/mm3、または10%超の幼若球の出現

厚生労働省の重症度スコア

Stage

0

0(軽症)

1

1(中等症)

2~8

2(重症Ⅰ)

9~14

3(重症Ⅱ)

15~27

5(最重症)

(表2)厚生労働省 重症度スコア

急性膵炎の治療

急性膵炎は通院での治療は困難な疾患で、受診後に緊急入院となる場合がほとんどです。入院期間中は絶食で、大量の点滴を連日行うとともに、膵炎の治療薬を投与します。重症例では外科手術や血液濾過透析が必要な場合もあります。治療期間は軽症で2〜3週間、重症では数カ月に及ぶこともあります。
炎症の再燃や症状の重症化を起こさないよう適切に食事を再開します。腹部や背部痛が消失(または鎮痛剤を使用しなくて良いほどに改善)したときを目安に、流動食から開始し、分粥食、軟菜食へと移行していきます。1日3回規則正しく、よく噛んで食べ、煮物・蒸し物など油を使用しない調理方法を選択する必要があります。

急性膵炎の相談目安

急激な上腹部痛、背部痛や吐き気が見られるとき、すぐに病院を受診してください。
特に症状が強いときは、ためらわずに直ちに救急要請を検討してください。

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