子宮腺筋症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

子宮腺筋症とは、子宮内膜類似の腺上皮および間質組織が子宮筋層内に発生する疾患と定義され、病変のある部位とその周囲の子宮筋層が肥厚する病態です。子宮内膜症の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

子宮腺筋症とは

子宮腺筋症は、子宮内膜類似の腺上皮および間質組織が子宮筋層内に発生する疾患と定義され、病変のある部位とその周囲の子宮筋層が肥厚する病態をいいます。類似した疾患である子宮内膜症は、子宮内膜が子宮以外の場所(主として卵巣など骨盤内)で発育・増殖するものを指し、子宮腺筋症とは区別されます。

子宮腺筋症の原因

帝王切開など骨盤内の手術や出産、流産などによって、筋層内に子宮内膜が直接浸潤する説、子宮内膜症病変が子宮漿膜面から筋層内に浸潤するという説、体腔上皮由来成分からの化生による発生という説など様々な原因が考えられています。

子宮腺筋症の疫学的整理

子宮腺筋症は、女性の20〜30%が罹患し、高頻度に子宮内膜症を併発する疾患です。
子宮腺筋症の診断年齢は、平均 38.2歳、治療年齢は38.7歳で、30 代後半から40 代前半の妊娠を希望する女性が子宮腺筋症と診断される機会が増えています。

子宮腺筋症患者の6~20%に子宮内膜症が合併し、64%に子宮筋腫を合併することから、診断の際には合併症の有無も併せて診断し、子宮内膜症および子宮筋腫に対する対応も合わせて総合的に治療が検討されます。

子宮腺筋症の症状

以下のものなどが挙げられます。

  1. 子宮出血
    過多月経、不正性器出血

  2. 疼痛
    月経痛、慢性痛、性交痛、排便痛

  3. 妊娠に関するもの
    流産、早産、不妊など

子宮腺筋症と閉経

子宮腺筋症は閉経すれば自然に治る病気です。子宮自体が正常になるわけではありませんが、子宮腺筋症の維持、増殖に必要なエストロゲンという女性ホルモンが、閉経後に減少すると子宮腺筋症も小さくなります。また子宮腺筋症は悪性の病気ではないため、月経痛や過多月経といった月経に随伴する症状が無くなれば完全に治らなくても問題ないとされています。その一方、閉経前の時期では、子宮腺筋症は徐々に大きくなり、症状も徐々に強くなるため治療が必要になる場合があります。

子宮腺筋症の診断

内診、経腟超音波検査、MRI検査、血液検査ではCA125を検査が行われます。内診所見では、子宮の大きさや硬さ、前屈か後屈か、圧痛の有無、可動性といって、内診時に子宮が動くかどうかといったことが診断の参考になります。経腟超音波検査では、子宮の壁の肥厚が特徴です。この場合、同様に子宮壁の肥厚を来す疾患である筋腫との鑑別が重要になります。子宮筋腫および子宮肉腫との鑑別が必要な場合には MRI 検査が有用となります。MRI検査で、子宮腺筋症は黒く描出された中に白い斑点が浮き出るという特徴的な像を呈します。また血液検査では、卵巣癌の腫瘍マーカーであるCA125が、子宮腺筋症では正常より高いことが多いため診断に役立ちます。

子宮腺筋症の治療

月経困難症、下腹痛、性交痛などの疼痛、過多月経やこれによる貧血、圧迫症状および不妊などの症状があれば治療の対象になります。子宮腺筋症の治療法には、薬物療法と手術療法があります。薬物療法のうち、対症療法では、月経困難症に対する消炎鎮痛薬や漢方薬、過多月経に伴う鉄欠乏性貧血に対する鉄剤投与を行います。

内分泌療法では、低用量ピル、GnRH アゴニスト、ジエノゲスト、ダナゾールなどがあります。不妊を合併している子宮腺筋症例では、内分泌療法の効果の持続時間は短いことから、不妊治療を優先する場合があります。手術療法には、子宮全摘術、子宮腺筋症摘出術があり、挙児希望の有無や病変の広がりを考慮し選択されます。

子宮腺筋症の相談の目安

月経時の出血量が多いとき、月経とは異なる時期に出血があるとき、月経痛や性交痛、排便痛などがあるとき、なかなか妊娠しないときなど、早期の産婦人科受診を推奨いたします。

<リファレンス>

日本産婦人科医会 No102.子宮内膜症・子宮線筋症
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020
霞ヶ浦医療センター 子宮腺筋症Q&A ver.3

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