自己免疫性溶血性貧血|疾患情報【おうち病院】
記事要約
自己免疫性溶血性貧血は自身の赤血球に対する自己抗体が産生されて、赤血球が脾臓や肝臓、血管内で破壊されて、赤血球寿命が短縮することでおこる貧血です。
自己免疫性溶血性貧血とは
自身の赤血球に対する自己抗体が産生されて、赤血球が脾臓や肝臓、血管内で破壊されて、赤血球寿命が短縮することでおこる貧血です。体温(37℃)付近で赤血球と抗体の結合が強いものを温式、体温以下(特に4℃)で結合が強いものを冷式と呼びます。自己抗体により細胞が障害される自己免疫性疾患のためⅡ型アレルギーに属します。後天性溶血性貧血で最も頻度が高い疾患です。英語ではautoimmune hemolytic anemiaといい、頭文字をとってAIHAという略語で表されることもあります。
自己免疫性溶血性貧血の原因
鎮痛薬や抗生物質などの薬、肺炎など何らかの感染、白血病やリンパ腫などのがん、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなど自己免疫疾患が原因として挙げられますが、特発性という原因不明の場合も少なくありません。
自己免疫性溶血性貧血の疫学的整理
自己免疫性溶血性貧血は国の指定難病の1つで、現在日本では1178名の方が、難病指定を受け、治療を受けています。1) 温式AIHAがAIHA全体の約90%を占めます。温式AIHAに血小板減少性紫斑病(ITP)合併したものをEvans症候群と呼び、温式AIHA患者の10~20%を占めます。
自己免疫性溶血性貧血の症状
主な症状は貧血によるもので、だるさ、動悸、息切れ、めまい、頭痛などです。軽い黄疸(白眼や肌の黄染)がみられることもあり、脾臓が腫れることもあります。慢性に経過すると胆石症を合併することも知られています。急激に赤血球が壊されるとヘモグロビン尿(赤色~暗褐色の尿)がみられます。
自己免疫性溶血性貧血の診断
臨床症状として、黄疸や脾腫があり、血液検査で間接ビリルビン上昇、LDH、網赤血球の増加、ハプトグロビンの減少、正球性貧血(ときに大球性)を認め、直接Coombs試験陽性となるとき、本疾患を強く疑います。貧血と黄疸を伴っても溶血が主な原因ではない他の疾患(巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群、赤白血病、congenital dyserythropoietic anemia、肝胆道系疾患、体質性黄疸など)を除外して診断します。2)
自己免疫性溶血性貧血の治療
副腎皮質ステロイドの投与を行い、ステロイドに反応しない場合は、脾臓の摘出や免疫抑制薬の投与を行います。近年ではモノクローナル抗体製剤であるリツキシマブがステロイド不応例に対する新しい治療として有効との報告があります。3)
自己免疫性溶血性貧血相談の目安
だるさ、動悸、息切れ、めまい、頭痛、眼瞼結膜や皮膚の黄染、お腹の張りや痛み、不快感が現れた時、赤色~暗褐色の濃い色の尿がでたときは早めに総合病院の内科や血液内科を受診しましょう。
<リファレンス>
1)令和3年度末現在 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数
2)難病情報センター自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(指定難病61)
3)リツキシマブが奏効したステロイド薬抵抗性Evans症候群の1例〔日内会誌108:277~282 ,2019〕