性感染症(クラミジア)|疾患情報【おうち病院】

記事要約

性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トリコマチスを病原体とする、日本でもっとも多い性感染症です。性器クラミジア感染症の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

クラミジアとは

性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トリコマチス(Chlamydia trachomatis)を病原体とする感染症です。淋菌感染症、性器ヘルペス感染症、尖形コンジローマなどと同様に5類感染症に分類されており、日本でもっとも多い性感染症です。

感染すると、女性では子宮頸管炎、男性では尿道炎を主に起こしますが、無症状の場合も少なくはありません。

クラミジアの原因・感染経路

クラミジアは主に性交渉でヒトからヒトへ感染します。感染部位の粘膜や分泌物の接触により感染するため、性器のみでなく咽頭や肛門に感染する場合もあります。また、分娩時に母体から児へ母子感染することもあるため、妊娠中に感染が確認された場合は、分娩前に治療を行う必要があります。

クラミジアの潜伏期間は1-3週間程度といわれていますが、症状が出ないこともあるため、いつ感染したのか不明な場合も多くあります。

クラミジアの疫学的整理

性器クラミジア感染症は、5類感染症として地方自治体が定めた性感染症定点医療機関からの報告が義務付けられています。定点当たり報告数は、男女ともに2002年をピークに減少傾向にありましたが、2016年から増加傾向がつづいています。男女とも若年層の感染が多く、特に女性ではその傾向が強くみられ、29歳以下では女性の感染が男性の感染を上回っている状況です。また、妊婦健診において正常妊婦の3-5%でクラミジア保有が確認されています。そのため、自覚症状がない感染者はさらに多いと考えられています1)。
WHOによると、2020年には、世界で1億2850万もの新規感染者(15-49歳)がいたと推定されています2)。このような状況を鑑みて、WHOは2030年までにクラミジアの新規感染者を50%に減らすことを目的とし、対策を講じています。

クラミジアの症状

クラミジア感染症は90%以上は無症状であるといわれており、その場合は感染しても気づかずに未治療で放置されることが多い状況です。

婦人科では一般的に、性交渉の経験のある女性の帯下増加、性交時出血、下腹部痛、右上腹部痛などの症状があるときにクラミジア感染症を疑います。

 症状が乏しい場合は早期の治療が行われず、子宮頸管から上行性に感染が進行し、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis Syndrome)を起こすこともあります。これらは卵管の通過障害を引き起こし、女性不妊症や異所性妊娠の原因にもなります。

クラミジアの診断

性器クラミジアの診断は、子宮頸管擦過検体を専用のスワブで採取し、PCR検査によってDNAを検出することで行います。骨盤内癒着を評価するための不妊スクリーニングとしては抗体検査(IgG、IgA)も行われますが、既往感染も反映し、治療後も陽性が一定期間継続するため、診断や治療の効果判定においては適しません。

 クラミジア陽性者の約10%には淋菌感染症も合併しているといわれているため、同時検査が推奨されます。

クラミジアの治療方法

治療は、マクロライド系またはキノロン系の経口抗菌薬で行います。クラミジア子宮頸管炎はアジスロマイシン、クラリスロマイシン、レボフロキサシン、シタフロキサシンによってほぼ確実に治療が可能であるといわれています。その中でも、アジスロマイシン(ジスロマック®錠 250㎎ 1回4錠 1日1回)は単回投与であるため治療コンプライアンスが良好です。

 また妊娠中の治療においては、アジスロマイシン(ジスロマックⓇ錠250mg 1回4錠 1回)あるいはクラリスロマイシン(クラリスⓇ錠等200mg 1回1錠1日2回7日間)が推奨されています。

 お互いに移しあってしまう”ピンポン感染”を防ぐため、パートナーの検査・治療も同時に行うことが重要です。治療後3週間以上あけて治癒判定を行いますが、それまでは避妊をすることが必要となります。

 上行性感染のために骨盤内炎症性疾患(PID)を起こしている場合、軽症であれば経口での治療が可能です。ただ、激烈な腹痛をともなう重症例は入院管理の上、ミノサイクリンまたはアジスロマイシンの点滴剤による治療を行います。

クラミジアの相談の目安

クラミジアの症状を感じたとき、パートナーがクラミジアと診断されたとき、複数のパートナーと性交渉があるときなどは速やかに検査が必要です。

また、プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)の一貫としての検査や、ピル内服中の方は年1回の定期チェックとしての検査も推奨されています。

(クラミジア)の感染の予防法

クラミジア感染症に予防接種はありません。

予防法としては、性交渉の際にコンドームを使用することが第1となります。またクラミジア感染の恐れがある相手との性的行為(口腔性交や肛門性交を含む)などは避けることなどが挙げられるでしょう。

<リファレンス>

(1)NIID 国立感染症研究所 

(2)WHO Chlamydia

(3)産婦人科診療ガイドライン  産科外来編2020

(4)産婦人科診療ガイドライン  産科外来編2020