乳がんはどこで相談すべき?失敗しない乳がんの病院の選び方
記事要約
「最近胸にしこりがあって気になっている」「乳がん検診はどこで受ければいいのか」「病院はどう選べばよいのか」と悩む女性は多いと思います。そこで、乳がんの種類や病院の選び方など治療に役立つポイントを解説しました。
最近胸にしこりを見つけて心配している、そもそも乳がん検診をどこで受ければいいのかわからず、病院はどう選べばよいのかと悩んでいる方や躊躇している方もいるでしょう。
そこで、今回は乳がんの種類やそれぞれの病院の特色など、例を挙げながら乳がんの病院選びに役立つポイントをみていきます。
乳がんとは
乳がんとは、乳房内に存在する乳腺組織から発生した悪性腫瘍です。日本の女性では11人に1人が乳がんに罹るとされています。
約90%は、母乳を乳頭まで運ぶ乳管から発生する「乳管がん」で、約5%~10%は母乳をつくる小葉に発生した「小葉がん」と呼ばれます。
日本人の女性が最も罹りやすいがんで、早期に発見し治療すれば治りやすいのも大きな特徴です。
※参考元:日本医師会|乳がん検診 / 乳がんとは?
乳がんの原因
乳がんの原因は、エストロゲンの影響によるものと考えられています。
しかし、詳細な発症メカニズムは現在も不明です。乳がんのリスクを高める要因としては、「初経年齢が早い」、「閉経年齢が遅い」、「出産歴がない」、「乳がん・卵巣がんの血縁者がいる」などといったことが挙げられます。
その他、飲酒・喫煙・肥満などもリスクになるとされていますので、発生リスクが高い場合には定期検診を受けることが重要です。
日本医師会サイトでも、体内エストロゲンレベルに影響を与えるものをリスク要因として挙げられています。
※参考元:日本医師会|乳がん検診 / 乳がんの原因
乳がん検診/病院受診のタイミング
乳がん検診/病院検診の具体的なタイミングは以下のように分かれるため、項目ごとに詳細をみていきましょう。
乳がん検診
推奨されている乳がん検診の間隔は、1~2年に1回です。
厚生労働省の政策では、40歳以上の女性に対し2年に1回のマンモグラフィによる検診が推奨されています。
ほとんどの市町村が検査費用の多くを公費負担しているため、わずかな自己負担で受けることができます。
任意で検診する場合(人間ドックなど)は、1年に1回受診するなど自分の思うタイミングで受けることが可能です。
日本では40歳を過ぎた辺りから乳がんが増加傾向で、50歳前後がピークとなります。
そのため、リスク要因の多い方は、なるべく1年に1回検診を受けるのがよいでしょう。
ただし、月経前や生理中は乳房が張っているため、検査で強い痛みを感じたり、診断が難しくなることがある点は留意してください。
生理が終わり、乳腺が柔らかくなったタイミングでの受診がお勧めです。
乳がんは早期の発見が重要となるため、少なくとも2年に1回は検診を受けることが大切です。
初期の腫瘍が小さいうちに発見して治療すれば、約90%以上の方が治癒すると報告されています。
検診で異常が見つかった際には速やかに医療機関を受診することが大切です。
厚生労働省サイトでも、早期がんで発見すれば97.2%の確率で治るといわれています。
※参考元:厚生労働省|がん検診ってなに?
日本では一定年齢の方を対象に、乳がん検診の無料クーポンと検診手帳が配布されています。
お住まいの地域により配布内容が異なるため、詳細は各市区町村の「がん検診担当窓口」に問い合わせてください。
病院受診
乳がん検診で異常を指摘された場合に病院を受診するだけでなく、何か気になる症状を自覚した時も受診するタイミングといえるでしょう。
自覚症状として多いのが、「胸のしこり」です。
乳がん以外にもしこりができる原因はありますが、検査をしなければ鑑別できないため自己判断せず受診することをお勧めします。
その他、乳頭からの血性分泌物、皮膚のひきつれや凹み、違和感などがあります。
このような症状に気づいた時は受診のタイミングといえるでしょう。
乳がんの検査
乳がんの検査方法は、問診、視診・触診、超音波検査、マンモグラフィと呼ばれる乳房X線検査の4つです。
詳しい検査方法は以下の4つの方法があります。
<問診>自覚症状の有無や乳がんの家族歴などの情報を集めるために行われる。
<視診・触診>乳房の形や皮膚の状態、乳頭に異常がないか観察。乳房やわきの下に触れてしこりや腫れの有無を見る。
<超音波検査>乳房の内部を画像化し映し出して診断。
<マンモグラフィ検査>40歳以上の女性に推奨されている検査。撮影台に乳房を乗せ、両側から板で圧迫し薄くのばした状態でレントゲン撮影する。
これらの検査の結果、医師により詳しい検査が必要とされた場合は、細胞診・組織診などの精密検査が行われます。
がんが見つかった場合には、周囲のリンパ節や臓器に転移などがないかを確認するために画像検査(CTやMRI検査など)が追加されるのが一般的です。
厚生労働省も、乳がん検診において視診・触診は推奨しておらず、問診およびマンモグラフィーを指針で定めています。
乳がんの種類
乳がんには性質の異なるものが存在します。主にホルモン受容体陽性乳がん、HER2(ハーツー)陽性乳がん、トリプルネガティブ乳がん、遺伝性乳がんの大きく4タイプに分かれます。
《1》ホルモン受容体陽性乳がん
女性ホルモンであるエストロゲンを栄養にして増殖するがんです。乳がん全体の約70~80%がホルモン受容体陽性乳がんであることから、乳がんの中では頻度の高い種類となります。
主な治療としてホルモン療法(エストロゲンを阻害する薬剤投与)が行われ、他の乳がんと比較すると予後の状態は良好です。早期に発見されれば抗がん剤を使用せず、ホルモン療法のみで治療するケースもあります。
※参照元:乳がん.jp|ホルモン受容体陽性乳がん / あなたのがんの特徴
《2》HER2(ハーツー)陽性乳がん
HER2(ハーツー)は、様々ながん細胞の表面に現れるタンパク質の一種です(特に乳がん、胃がん)。
HER2陽性乳がんは、乳がん全体の約15~20%に該当します。
がん細胞の増殖と関係し、乳がん細胞の表面に多く存在している場合、HER2陽性乳がんと呼ばれます。
治療法は、HER2タンパクを標的にし攻撃する抗HER2療法です。
昔は進行が早く転移しやすいといった特徴があったものの、近年では効果の高い治療薬が次々と開発されています。
そのため、治療実績は向上しており、再発率も下がっています。
《3》トリプルネガティブ乳がん
ホルモン受容体のエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2(ハーツー)タンパクの3つが存在しないタイプの乳がんです。乳がん全体の約15~20%が該当するといわれています。
他の乳がんと比較して転移が起こりやすく、再発率も高いのが特徴です。
治療の際は、ホルモン療法や抗HER2療法では効果が期待できないため、細胞障害性抗がん剤が適用されるのが一般的です。
さらに、免疫チェックポイント阻害剤、PARP阻害剤などの薬剤の選択肢が広がってきており、がんの性質によっては治療効果の向上が期待されています。
《4》遺伝性乳がん
乳がんは、約7~10%が遺伝が関与しているといわれています。
乳がんの発生に関わる遺伝子として、BRCA1とBRCA2が発見されている状況です。
2種類のうちいずれかの遺伝子に生まれつき変異がある状態を「遺伝性乳がん、卵巣がん症候群」といいます。
乳がんの発症リスクが6〜12倍と高く、若年での発症、両方の乳房にできやすい、卵巣がんを発症しやすいなどの点が特徴です。
両親のどちらかがBRCA1とBRCA2に病的な変異がみられた場合、2分の1の確率で変異が子どもに受け継がれるとされていますが、必ずしも発症するわけではありません。
治療法は一般的な乳がんと同様であるものの、欧米では予防的切除の検討を促すこともあります。
2020年4月から、日本でも予防的切除(リスク低減手術)が保険適用になっています。
※参照元:がんプラス|遺伝性乳がん、治療の進め方は?診断・治療後の対応は?
乳がん病院の種類
乳がんの治療を行うにあたり、まずは病院の種類を把握しておきましょう。
乳がんの場合、全国の検診(健診)センター・乳腺クリニック・総合病院・大学病院・がんセンターなど、乳腺外科のある病院が選択肢となります。
《1》検診(健診)センター
- 乳がんの1次検査を専門とした施設
- 検診を希望する方を対象としており、初めての方も行きやすい
- 女性のための検診プランを設定している所などセンターごとに特徴がある
- マンモグラフィ検査や超音波検診は、人間ドッグのオプションとしてのみ受け付けている施設もあり、事前に確認が必要事前に専門医の有無や金額に関して下調べが必要
- 2年に1回の健保や市区町村による検診、任意での検診によって料金が異なる
- 検診に特化しており、治療を受けることはできない場合が大多数
《2》乳腺クリニック
- 専門医が常駐していることが多く、検診もしくは自覚症状が出ている方の初診に適している
- 大学病院やがんセンターにて勤務経験があり、乳がん治療の経験豊富な専門医が勤務している場合もある
- 問診や検査は女性医師がおこなう、スタッフが全員女性のクリニックがあるなど女性が通院しやすい環境を整えているところが多い
- 立地条件が良かったり、診療時間が幅広いことも多い
《3》総合病院
- 検診から乳がんの診断、治療(手術を含む) まで1つの施設で完了できるケースが多い
- 乳腺外科(乳腺センター)を新設する病院が増加傾向にあり、複数の専門医が常駐している場合もある
- 病院によっては、初診・再診が完全予約制の場合がある
- 初診時には紹介状が必要な施設があるため、事前に確認が必要
- さまざまな診療科と協力して診療をおこなってもらえる
《4》大学病院・がんセンター
- 乳がんの専門医が勤務していることが多い
- 多くの施設でセカンドオピニオン外来がある
- 手術を含め、他院では治療が困難な症例にも対応可能なことが多い
- 施設によって他の病院からの紹介状が必要な場合がある
- すぐに予約が取れない、診療時間が短いなど不便なことがある
- さまざまな診療科と協力して診療をおこなってもらえる
乳がんの病院選びの際に重視する点
乳がん治療には原則として、科学的根拠に基づいたガイドラインがあるため、治療効果の高いがん治療を受けることが可能です。
しかし、乳がんの病院選びでは、医療態勢や医療機器、専門医やセカンドオピニオンの活用、主治医との相性、病院の評判などを調べることも大切です。
※参考元:乳癌診療ガイドライン2018年版 2021年3月 改訂
《1》医療態勢
理想的な診療体制としては、1人の患者に対し複数の医師が対応するグループ診療が挙げられます。
エコーやマンモグラフィー検査による画像は、最低でも2人以上の医師が対応しない場合、見落とされる可能性があるためです。
乳がんは数値で診断できないため、画像を見る医師によって診断結果が異なることがあります。
複数の医師が診断することで見落としを防ぐことができ、乳がんの疑いがある場合でも精密検査や治療の流れまでスムーズに対応できます。
そのため、可能な範囲でグループ診療が行われている病院を選びましょう。
《2》医療機器
新しい医療機器を導入している病院では、最新の技術を学んでいる可能性が高いです。
新しい医療機器は大変高価で、使いこなすには多くの学びが必要となります。大病院でも新しい医療機器を導入しているとは限りません。
医療機器に関しては、病院のホームページに記載されている場合がほとんどです。
そのため、必ずどのような医療機器を導入しているのか確認しましょう。
最新の医療機器としては、以下のような機器があります。
- マンモグラフィー(乳房X線検査)、3Dマンモグラフィー
- 超音波診断装置
- MRI装置
- CT装置
上記のような機器が導入されていれば、さまざまな方法で検査がおこなえるため、乳がんの発見、病変の把握(転移の有無など)が可能です。
乳がん検診に関して、最近ではMRIでの検診が可能なクリニック・病院が見られるようになりました。
自費診療となりますが、痛みを伴わない・Tシャツを着て撮影できる・がんの発見率が高いなどの利点もあります。
従来法での検診に躊躇している方は、MRI乳がん検診についての情報を調べてみるのもよいでしょう。
《3》専門医の有無
乳がん検診では、エコーやマンモグラフィーの画像を目視して診断します。そのため、画像の読影には経験や知識、複数の医師で確認するといったことが大切です。乳腺専門医やマンモグラフィ読影専門医などの資格の有無は、治療にあたる医師本人の知識や技量を判断する一つの目安となります。
《4》主治医との相性
主治医は乳がん治療を担当するだけでなく治療後の経過観察も行うため、長い付き合いになります。
乳がんだけでなく病気の治療では精神面のケアも大切です。
場合によっては、自身の家庭や仕事の状況などを話す必要があることもあるでしょう。
そのため、話しやすい雰囲気であったり、話をよく聞いてくれるか、適切なアドバイスをくれるかなどの口コミや評判も病院選びの参考になります。
乳がんは、数年後に再発することもあるため、あなたが生涯付き合っていける医師を主治医として選びましょう。
《5》病院の評判
近年ではGoogleマップでも多くの口コミが見られ、全国の病院の評判を検索できるWebサイトも存在します。
乳がん治療を受ける場合は病院と長い付き合いとなるため、口コミのチェックは欠かせません。
院内の環境、予約体制、スタッフや医師の対応、治療方法、手術後の対応など、気になる箇所について口コミされていないか調べてみましょう。
《6》セカンドオピニオンの活用
通院をはじめた後、主治医の説明は理解したけれど、他の医師の診断や治療方針も聞いてみたいと思った場合にはセカンドオピニオン外来を利用することが可能です。
主治医以外の意見を聞くことで、病状の理解がより深まったり、別の治療法を提案されれば治療法の選択肢が増えるといったメリットがあります。
セカンドオピニオンは担当医をコロコロ替えたり、転院するといういわゆる”ドクターショッピング”とは異なります。
セカンドオピニオンを受けたい旨を主治医に伝え、診療情報提供書や検査結果などを準備してもらいましょう。
地域のがん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」に問い合わせると、その地域でセカンドオピニオン外来のある病院の情報を得ることができます。
病状によっては時間的余裕がなく、早期に治療を開始したほうが良いこともあるので、その点は主治医に確認する必要があります。
乳がんの病院選びのためのチェックリスト
乳がんの病院を選ぶときには、以下のようなポイントを参考にしてみましょう。
- 医療態勢
- 医療機器
- 専門医の有無
- セカンドオピニオンの有無
- 主治医との相性
- 病院の評判
それぞれのポイントをチェックする際は、気になる病院のホームページから治療方針や院内の様子など具体的な説明がされているページを確認しましょう。
近年では多くの病院は、手術件数や実績をホームページで掲載しています。
医師の写真や自己紹介も見られるため、確認しておくと安心できます。
また、Googleマップや医療関係の口コミサイトから病院の評判を確認することも可能です。
気になる点については、事前に自分で調べておくといいでしょう。
まとめ
乳がん検診の病院選びに関しては、アクセスのしやすさに加えて、検査結果の読影を行う医師が専門医であるかどうかを調べてから決めるとよいでしょう。
乳がんと診断された場合の病院選びでは、アクセスのしやすさだけでなく、専門医の有無・治療実績・高度な医療を提供しているかなどの情報を集めることが大切です。
また、持病がある場合には、その治療も行える診療科が併設されているかも確認するとよいでしょう。
通院を開始した後であっても、他の医師の診断や治療方針を聞いてみたいと思った場合にはセカンドオピニオン外来を利用することができます。
そのため、あなたが納得できる治療を受けられる病院を選ぶことが大切です。
以上お読みいただきまして、少しでも乳がん治療の病院選びの際にお役に立てましたら幸いです。