糖尿病はどこで相談すべき?失敗しない糖尿病の病院の選び方
記事要約
「健康診断で高血糖を指摘された」「最近喉がよく渇いて頻尿気味」「病院はどう選べばよいのか」と悩む方は多いでしょう。そこで、糖尿病の種類や病院の選び方など、糖尿病の治療に役立つポイントを解説しました。
健康診断で高血糖を指摘された、最近喉がよく渇いて頻尿気味、病院はどのように選べばよいかなど糖尿病について悩む方は少なくありません。
そこで、今回は糖尿病の種類やそれぞれの病院の特色など、例を挙げながら糖尿病の病院選びに役立つポイントを詳しくみていきましょう。
糖尿病とは
糖尿病とは、インスリンという血液中のブドウ糖(血糖)を調整するためのホルモンが減少し、血糖値が高くなる病気です。
重症化すると高血糖状態が慢性的に続き、余分な糖を尿中に排泄しようと体が反応するため尿糖が出るようになることから、この名が付けられました。
放置するとさまざまな合併症を併発するため、早めの予防と対策が重要です。
※厚労省によるe-ヘルスネットでは、糖尿病を発症する手前で防ぐ1次予防、発症後の血糖値を良好にコントロールして健康的に生活する2次予防、合併症の発症を食い止める3次予防が必要だと記載されています。
糖尿病の原因
糖尿病には1型と2型があり、それぞれ原因が異なります。
このうち日本人に多いのは2型糖尿病で、運動不足や暴飲暴食など、悪い生活習慣の積み重ねがおもな原因です。
他にも、遺伝的な影響でインスリンが減少する、効きにくくなるケースもあります。
一方、1型糖尿病は自己免疫異常によって、膵臓でインスリンを作る細胞を自ら破壊してしまうことが主な原因といわれています。
まれに自己免疫疾患がない場合でも、原因不明で突発的に発症するケースもあることは把握しておきましょう。
1型糖尿病・2型糖尿病の詳しい特徴は、後述に解説しているため、併せてご覧ください。
糖尿病の病院を受診するタイミング
糖尿病は初期段階では、自覚症状がほとんどありません。
そのため、健康診断で血糖値またはヘモグロビンA1c(HbA1c)が基準値よりも高い、と言われた段階で予防・対策を講じることが大切です。
糖尿病でよくいわれる「喉が渇く」「頻尿」「手足のしびれ」などの自覚症状があらわれるのは、既に高血糖状態といわれるときです。
病状が進行すると動脈硬化から始まり、脳梗塞や心筋梗塞、末梢神経障害、網膜症、腎不全など合併症のリスクが高まります。
初期段階で適切な治療を受けることで、健康な人と同じ生活を送れます。
早期発見のためにも、毎年健康診断を受けましょう。もし糖尿病の疑いを指摘された際は、早めの受診を推奨します。
糖尿病の検査
糖尿病の診断では血液検査が重要です。
具体的には空腹時の血糖値、HbA1c、随時血糖値などを測定します。
さらに典型的な糖尿病の症状や合併症の有無、尿検査の所見などを見て総合的に判断するものです。
空腹時の血糖値が基準値内でも、食後の血糖値が異常に上昇する「隠れ糖尿病」が疑われる場合もあります。
その際は75gOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)といって検査用のブドウ糖水を飲み、30分・60分・120分後の血糖をそれぞれ測定する検査をおこない診断します。
糖尿病の種類
糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病の2種類があります。
中でも1型糖尿病の場合、病状によってさらにいくつかの種類に分けられる点は把握しておきましょう。
《1》1型糖尿病
膵臓でインスリンを作り出す「β細胞」という細胞が何らかの原因で破壊され、血糖値のコントロールができなくなる病気です。
ほとんどの場合は遺伝要素が大きいとされているものの、原因はよく分かっておらず、研究が必要な病気とされています。
急性発症1型糖尿病
同じ1型の中で最も典型的なタイプです。
インスリンの補充が必要になるのは、糖尿病の自覚症状があらわれ始めてから数カ月程度といわれています。
自己免疫異常による発症が多い傾向にあるものの、原因が判明しないケースもあることは把握しておきましょう。
このタイプでは発症後、自身のインスリンの働きが一時的に正常となる「ハネムーン期」が来ることがあります。
しかし、改善することはなく、その後は再びインスリン治療が必要です。
劇症1型糖尿病
発症1週間前後でインスリンを分泌できなくなり、急激に症状が現れ進行するタイプです。
インスリンをすぐに補充しなければ、最悪の場合、糖尿病ケトアシドーシスという急性合併症を引き起こし昏睡状態になることがあります。
そのため、早期の発見が重要になってきます。
緩徐進行1型糖尿病
半年から数年かけて、病状が徐々に進行するタイプです。
当初は2型糖尿病と診断され、その治療経過中に血液検査で自己抗体が出現するようになり初めて緩徐進行1型だと判明するケースもあります。
この場合もインスリンの補充が必要になります。
《2》2型糖尿病
インスリンの分泌量が低下したり、インスリンそのものの働きが悪くなる病気です。
運動不足や暴飲暴食などの環境的な影響に加え、遺伝的要因も影響しているといわれています。
治療方法としては、まず食事や運動などの生活習慣の見直し、飲み薬による薬物療法が行われます。
必要に応じてインスリン注射を使用します。
糖尿病病院の種類
「糖尿病かもしれない」と思ったら、まずは糖尿病内科(内分泌代謝内科)の個人病院・クリニック、またはその診療科を有する総合病院や大学病院に相談しましょう。
個人病院・クリニックの場合は合併症の内容に応じて循環器内科、腎臓内科、眼科、整形外科など別の専門科への受診が必要になる場合があります。
《1》総合病院・大学病院
- 複数の診療科と連携している
- 医療設備が整っている
- 合併症に対する治療を専門科で受けられる
- 重症化した場合には入院治療が可能なことが多い
- 初診では、紹介状が必要なことがあるため事前に確認が必要
- 病状が安定すれば、かかりつけ医へ転医しなければならないことが多い
《2》個人クリニック
- 診察日や診療時間が総合病院と比較すると柔軟なことが多い
- 立地条件が良いところが比較的多い
- 健診で異常が見つかったり、症状を自覚した際、初診として利用しやすい
- 重症化すると総合病院に転院の可能性がある
- 合併症に対する治療ができない場合がある
- 症状が安定した際には、かかりつけ医として利用しやすい
糖尿病の病院選びの際に重視する点
糖尿病に関して相談する病院を選ぶ際は専門医が在籍する病院、糖尿病教育入院がある病院、複数の診療科を有する病院、主治医との相性、アクセスの利便性などのポイントを押さえて選ぶことが重要です。
《1》専門医が在籍するクリニック・病院
まずは、糖尿病学会認定の専門医が在籍している病院を探しましょう。
認定医の人数は地域で違いがあるものの、1都道府県ごとに30~50人が存在します。
通常の病院に比べてより専門的な検査や治療が行えるほか、糖尿病の知識や適切なアドバイスなども受けられます。
※専門医は日本糖尿病学会のホームページで検索できます。
《2》糖尿病教育入院がある病院
生活習慣を正すための指導を行う「糖尿病教育入院」が用意されている病院もあります。
患者さんひとりひとりに合わせた生活指導を短期間に集中して受けられるため、前向きに改善へ努めることが可能です。
初めて糖尿病と診断された方、治療を開始してもなかなか血糖値が安定しない方などが対象になります。
ただし、短期間とはいっても1~2週間程度は必要なことがほとんどです。
《3》複数の診療科を有する病院
糖尿病は様々な合併症を伴う病気のため、一般内科だけでなく腎臓内科、循環器内科、眼科や整形外科など、複数の診療科の受診が必要になることがあります。
そのため、糖尿病内科または内分泌代謝内科を有する大学病院・総合病院では糖尿病の治療経験が豊富で、複数科が連携して糖尿病治療に当たることが可能です。
《4》主治医との相性
糖尿病の治療は長期間に及ぶため、患者本人の意志はもちろん、主治医との相性も重要です。
いくら素晴らしい経歴を持つ医師にかかっても、患者さんとの相性がよくなければ、治療の継続は難しくなるでしょう。
糖尿病治療は言われるままに進めるのではなく、自身の生活事情などについて本音で話し合いながら進めていくのがベストです。
コミュニケーションが取りやすいと思う医師を見つけられれば、前向きに治療を受けることができるでしょう。
《5》アクセスの利便性
糖尿病の治療は長期間に及ぶことがほとんどです。
そのため、自宅近くや通勤途中に位置したり、診療時間が長く設けられている病院の中から選択できれば、比較的楽に通院し続けられるでしょう。
糖尿病に注力している病院が身近になければ、駅の近くなどのアクセスが便利な病院を選ぶことが、長く通い続けるうえでは大切です。
糖尿病の病院選びのためのチェックリスト
糖尿病の病院を選ぶときには、以下のようなポイントを参考にしてみましょう。
- 専門医が在籍する病院
- 糖尿病教育入院がある病院
- 複数の診療科を有する病院
- 主治医との相性
- アクセスの利便性
インターネットでリサーチするところからスタートしましょう。
それに併せて、ネット上の口コミや評判なども参考にできます。
気になる病院のホームページを見つつ、不明な点は電話で相談すると良いでしょう。
糖尿病に対していかに注力されているか、自分に合った病院なのかといった情報を事前に入手できれば、安心して相談に臨めるでしょう。
まとめ
糖尿病に関して病院に相談する際は、まず糖尿病内科や内分泌代謝内科を有する病院へ相談しましょう。
血液検査だけでなく、尿検査や血糖値測定などの検査で詳しくみてもらえます。
また糖尿病が進行している場合、頻回の検査や長期間の治療が必要になります。
そのため、通院の負担が少ない範囲内で病院を選ぶとよいでしょう。
糖尿病は放置すると怖い病気であるものの、早期に発見し、しっかり治療することができれば健常な人と変わらない生活を送ることもできます。
できる限り早急に対処するため、定期的な健康診断を受けることはもちろん、気になる症状があれば躊躇せず病院に相談することをお勧めします。
以上お読みいただきまして、少しでも糖尿病の病院選びの際にお役に立てましたら幸いです。