拘束型心筋症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

心臓の内腔の拡張や心臓の壁の肥大を伴わず、心臓の動きも見た目は正常であるのに、心臓が硬くて広がりにくいため心不全としての症状をきたす病気をいいます。拘束型心筋症の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

拘束型心筋症とは

心臓の内腔の拡張や心臓の壁の肥大を伴わず、心臓の動きも見た目は正常であるのに、心臓が硬くて広がりにくいため心不全としての症状をきたす病気をいいます。このような病態は、様々な病気に伴い発生する場合、二次性拘束型心筋症といいますが、原因がわからずこの疾患を発症した場合は、特発性拘束型心筋症といいます。

拘束型心筋症の原因

様々な病気や治療に伴って発症した「二次性拘束型心筋症」の原因については以下のようなものが挙げられます。

  • 強皮症
  • アミロイドーシス
  • サルコイドーシス
  • Gaucher病
  • Hurler病
  • ヘモクロマトーシス
  • Fabry 病
  • グリコーゲン病
  • 心内膜心筋線維症
  • 好酸球増多性心疾患
  • カルチノイド
  • 悪性腫瘍の転移
  • 放射線照射の副作用
  • アントラサイクリン系薬剤の副作用

上記のような特定の原因がなく発症した場合の「特発性拘束型心筋症」の原因については、心筋を構成するタンパク質の遺伝子異常が原因となる場合がありますが、遺伝子異常が判明しない場合は原因不明に分類されます。

相談の目安

身体を動かしたときの呼吸の苦しさを感じたとき

息切れや手足のむくみ、胸部不快感や動悸がするとき

検診の心電図検査などで異常を指摘されたとき

疫学的整理

拘束型心筋症は国の指定難病の一つで、現在日本では約 50名の方が難病指定を受け治療を受けています。多くは小児期に発症することが多く、成人で心不全を初発することは少ないです。

拘束型心筋症の症状

軽症の場合は無症状のことが多いですが、病気が進行すると心不全、不整脈、塞栓症などがおこります。心不全の症状としては、階段をのぼったときなど身体を動かしたときの息苦しさが最初に自覚されます。他には、息切れや、手足や顔のむくみも挙げられます。さらに重症になると、起座呼吸(横になると呼吸が苦しくなり、上体を起こすと呼吸が楽になる状態)や全身のだるさ、皮膚が黄色っぽくなる、胸水、腹水などもみられます。種々の不整脈を合併することもあるため胸部不快感や動悸(胸がどきどきする)が出現することもよくあります。また、心臓内にできた血栓による末梢の塞栓症をきたすことがあり、合併症として脳梗塞、腎梗塞、肺梗塞などが起こることがあります。

重症化しやすい場合

この病気の予後は基礎疾患によって様々ですが、特発性拘束型心筋症の中では、特に乳児期に発症した場合、二次性拘束型心筋症の中では、特にアミロイドーシスが原因の場合、予後が不良になるとされています。

拘束型心筋症の診断の方法

呼吸困難、浮腫、動悸、疲れやすい、胸部圧迫感、頚静脈怒張、浮腫、肝腫大、腹水など心不全に関連する自覚症状が出現、聴診上も異常を認めることがあります。心電図では、心房細動、上室性期外収縮、低電位差、心房・心室肥大、ST−T異常、脚ブロックなどの所見を指摘されることがあります。心臓超音波検査では、心拡大や心肥大は認めず、正常に近い収縮機能、拡張機能の障害、心房拡大、心腔内血栓などを認めることがあります。心臓MRIでも、左室拡大・肥大、心膜肥厚・癒着の所見を認めないことを確認します。心臓カテーテル検査、左室造影、心筋生検、他の臓器(直腸や肝臓)の生検などの精査が必要に応じて行われます。

重症度の分類

症状による活動制限や特定の不整脈の有無、心不全や不整脈治療目的の入院歴の有無、血液検査でのBNP値などで軽症~最重症の4段階に分類されます。中等症以上であることが、難病指定の際の要件となります。

 

重症度分類

 

活動度制限

 

不整脈

過去1年間の心不全や不整脈治療の入院歴

BNP値

NT-proBNP値

 

判定基準

 

軽症

 

なし

なし または散発する期外収縮

 

なし

<100

<400

中等症の基準を満たさない

 

中等症

 

軽度

非持続性心室頻拍、または心房細動などの上室性不整脈

 

1回

 

100-499

400-1999

活動度制限が軽度あり、その他の項目1つでも満たす場合

 

重症

 

中等度~

重度

持続性心室頻拍または心室細動

 

2回以上

 

4項目のどれかを満たす場合

 

最重症

 

重度

 

2回以上または持続点滴

補助人工心臓

心臓移植適応

のいずれか

 

2項目すべて

満たす場合

拘束型心筋症の治療法

特発性拘束型心筋症は原因がわからないため、その病気に特異的な治療法はありません。また、二次性拘束型心筋症ではその基礎疾患を治療することになりますが、この基礎疾患に対しても有効な治療法がない場合もあり、いずれの場合も心不全、不整脈の治療、血栓塞栓症の予防が中心的な治療法になります。

心不全の治療については、利尿薬の内服が主体となります。不整脈の合併、特に頻脈性の心房細動の場合、心臓に負担をかけないために心拍数を抑える目的でβ遮断薬を内服します。また心房細動による脳梗塞などの血栓塞栓症の予防のために抗凝固薬の内服が必要となります。内服だけでうまく治療できない場合には、アブレーション治療やペースメーカー植込み手術、心臓移植が考慮されることがあります。

心不全の予防に自身でできること

日常生活において心不全を防ぐために食事療法や運動療法、禁煙、体重維持、禁酒・摂酒、過労防止、感染予防、適切な服薬などの実践することが重要です。以下目安を記しますが、

個別の具体的な内容に関して必ず主治医と相談してください。

  • バランスの取れた食事をする 塩分を控える
  • 原則として強度の高い運動は禁止、学校の運動部は禁止 
    有症状の場合、息がはずまない程度の運動は可 
    無症状の場合、少し息がはずむが息苦しくはない程度の運動は可
  • 1日30~60分、週3~7回の適度な運動を続ける
  • 心臓リハビリに参加する
  • 禁煙
  • 体重測定・記録しベスト体重を維持する
  • 血圧 140/90mmHg以下、HbA1c<7.0%、BMI<25を維持する
  • アルコール 重症心不全の場合は禁酒、軽症心不全の場合は少量(日本酒換算1合以内)
  • オーバーワーク、過労を避け、体調不良時は休息をとるようにする
  • うがい、手洗い、マスク着用し風邪をひかないようにする
  • インフルエンザの予防接種を受ける
  • 薬をきちんと服用する
  • 消炎鎮痛薬を続けて使わないようにする

早期診断の大切さ

初期の頃は無症状が多く発見が難しいのですが、診断、原因の特定を早期に行い、治療を開始することで心不全などへの病状の悪化を防げる病気になります。拘束型心筋症を疑うような胸の症状や検診での異常を指摘された場合は早期に循環器内科での専門的精査を受けることが重要となります。

<リファレンス>

難病情報センター 拘束型心筋症 

小児慢性特定疾病情報センター 拘束型心筋症

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