接触皮膚炎の症状・原因・治療法|疾患情報【おうち病院】
記事要約
接触皮膚炎とは、湿疹(=皮膚炎)のひとつですが、湿疹はその経過により急性湿疹と慢性湿疹に分けられます。接触皮膚炎はいわゆる「かぶれ」ですので、その多くは急性湿疹です。接触性皮膚炎の原因・症状、治療方法・改善対策を解説。
接触皮膚炎とは
接触皮膚炎は湿疹(=皮膚炎)のひとつです。
湿疹はその経過により急性湿疹と慢性湿疹に分けられますが、接触皮膚炎はいわゆる「かぶれ」ですので、その多くは急性湿疹です。
接触皮膚炎はその発症の原因により、2つに分けられます。
頻回の外的刺激によって生じる一次刺激性皮膚炎(おむつかぶれ、手荒れなど)と特定の物質に対して反応するアレルギー性接触皮膚炎です。後者はその人が特定の物質に反応するかどうかなので、個人差があります。
また、接触皮膚炎は、部位や原因により様々な病名が用いられています。おむつの当たる部位に生じるおむつ皮膚炎、頻回の刺激により手に生じる手湿疹、また、原因となるアレルゲンによりギンナン皮膚炎、ウルシ皮膚炎、サクラソウ皮膚炎、水銀皮膚炎、シイタケ皮膚炎などの病名で呼ばれているものは、これらを原因とする接触皮膚炎なのです。
この他、全身に広がったり、日光が関係する特殊なタイプもあります。
疫学
日本における接触皮膚炎の疫学調査によると、調査した多施設において、接触皮膚炎患者は総患者数の3.92%におよびます。大学病院では2.53%、病院では3.41%ですが、診療所(クリニック)では6.06%を占めます。年齢は全年齢に分布しますが、特に20~30歳代、50~70代に多いとされます。
調査においてももっとも多い疾患群は湿疹群38.85%(アトピー性皮膚炎、手湿疹、接触皮膚炎、脂漏性湿疹、その他)ですが、手湿疹やその他の中には刺激性、あるいはアレルギー性接触皮膚炎を含む可能性があります。
症状
基本的には「かぶれ」ですので、原因物質が触れた部位に限局して症状がみられます。赤い発疹に加えて小さな水疱や丘疹、紅斑、さらに皮膚がむけてしまったびらんの状態になったり、そこからの滲出液が固まった痂皮(かさぶた)が付着していることもあります。顔面や頭部のかぶれで目の周囲まで及ぶと、驚くほど腫れ上がってしまうことがあります。これは眼周囲の皮膚が非常に薄いためです。
通常、強いかゆみを伴います。強くひっかいてしまうことにより、原因物質が触れた部位以外にも発疹が広がってみられる場合もあります。刺激が強いと皮膚が壊死して潰瘍となってしまうこともあります。
通常は急性の経過で発症しますが、気づかずに長期間にわたって原因となる物質に触れていることにより発症することもあります。
原因
一次刺激性皮膚炎とアレルギー性皮膚炎では原因が異なります。
一次刺激性皮膚炎は、接触するものそのものの毒性によって皮膚が障害されます。ある程度以上の刺激となると誰にでも起こります。ずっとおむつの中で皮膚が湿った状態にあれば、誰でもかぶれてしまうというような場合です。
アレルギー性接触皮膚炎は、ウルシにかぶれる、湿布にかぶれるというように、特定のものにかぶれる人だけにみられるものです。「かぶれ」というとこちらのイメージが強いかもしれません。
かぶれの原因になる物質が、初回の接触により体内に入って「抗原」となり、再度この物資に触れたときに皮膚の炎症反応をきたします。したがって、初回の接触では生じません。
体内において、ある物質がこのような「抗原」となってしまうことを「感作」といいます。この感作が起こるかどうかは個人によって異なります。ウルシにかぶれる人と平気な人がいるように、その物質によって「感作」されアレルギーを起こすかどうかはその人の体質なのです。この抗原のことをアレルゲン(アレルギーを起こす物質)とも呼びます。
初回の接触で感作されてしまうと、その後に原因物質が再び侵入した際に炎症をきたします。感作された人にしか発症せず、一度感作されてしまうと、次に触れたときにはわずかの接触でも接触皮膚炎を生じます。
原因としては、植物や化粧品、洗剤、化学薬品など、職場や家庭環境下にある多くのものがあります。日常生活においても、衣類によるかぶれ、石鹸など、思いがけないものが原因となることもあります。原因物質の種類によって皮疹の分布に特徴があり、発症部位や問診から原因物質を推定します。頻度の高い原因と成分、発症部位から疑われる原因は以下のようなものがあります。
*アレルギー性接触皮膚炎の抗原となりやすいもの
- 重金属:クロム、ニッケル、コバルト
- 植物:ウルシ、サクラソウ、ラン、ギンナン、キク、アロエ
- 白髪染め:パラフェニレンジアミン
- 医薬品:軟膏、消毒薬
- 防腐剤:パラベン
- 合成樹脂:ラテックス
*接触皮膚炎発生部位と主な原因
- 頭:シャンプー、毛染め、育毛薬、帽子
- 顔:化粧品、医薬品、香水、メガネ、植物
- 頸部:ネックレス、化粧品、香水、医薬品、衣服
- 体幹・上肢・下肢:衣服、洗剤、金属、医薬品
- 手足:ゴム、皮革製品、植物、医薬品、洗剤、化粧品、金属
- 陰部:衣服、コンドーム、避妊用薬品
接触皮膚炎の特殊型
・全身性接触皮膚炎
接触皮膚炎を生じる物質を吸入、経口摂取するなどして、全身にアレルギー反応をきたすものです。シイタケや水銀によるものが有名で、シイタケ皮膚炎、水銀皮膚炎と呼ばれます。
・光接触皮膚炎(光毒性接触皮膚炎、光アレルギー性接触皮膚炎)
原因となる物質との接触だけでは症状はなく、紫外線照射によって発症するものです。ある種の湿布では高頻度に発症することが知られています。
*手湿疹について
女性に多い手湿疹も、一次刺激性皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に分けられます。多くは頻回の水仕事や界面活性剤の使用により皮膚のバリアが障害され、皮膚が乾燥し、赤くなったり硬くなり、ひび割れを生じるなど、慢性の一次刺激性皮膚炎を生じます。
また、職業性に接触する薬品や食品などがアレルギーの原因となって多彩な湿疹病変を生じるアレルギー性接触皮膚炎をきたすこともあります。
美容師では酸化染毛剤が最も多く、パーマ液、整髪料などの感作例もみられます。医療従事者では消毒薬やゴム手袋、歯科用材料などがアレルゲンとなりえます。清掃業従事者では、防護用手袋、調理従事者では魚介、小麦粉、野菜類などの食材との接触によるアレルギー性接触皮膚炎を生じます。
診断の方法
1)貼付試験(パッチテスト)
原因物質として推定されるものを実際に接触させて反応をみる検査です。推定される材料をワセリンなどに混ぜて、フィンチャンバーというアルミ製の皿がついた絆創膏にのせて通常は背中などに貼ります。
48時間後に絆創膏を剥がし、20分ほどおいて、貼っていたテープの刺激がおさまったところで判定します。貼っていた部位に赤い反応が出ていれば陽性と判断します。
実際に使用している物質を薄めてテストすることもありますが、日本接触皮膚炎学会のスタンダードパッチテスト25種類の試薬があり、金属、ゴム、樹脂、防腐剤など日常使用する物質や植物などに含まれている成分を、通常はかぶれない濃度で作成されています。 また、歯科金属によって難治となる皮膚疾患もあリ、歯科金属に使われている金属アレルゲンシリーズの試薬もあります。原因がはっきり推定できないが接触皮膚炎が疑われる場合など、こういった標準試薬のシリーズで検査します。
特に金属のテストでは遅れて反応がでることもあるため、判定は48時後のあと、72時間後、1週間後にも行います。
2)光貼付試験
接触物質に加えて紫外線が関係していることが疑われるときに行います。
消炎鎮痛剤のケトプロフェンが光アレルギーを誘発することが知られています。貼付試験に加えて紫外線照射による反応から判定します。
治療と予防
原因物質を見つけ、接触を避けることが基本です。
ステロイド軟膏外用、抗ヒスタミン薬内服を中心とし、症状の程度に応じてステロイド内服を行う場合もあります。
*手湿疹の予防
難治となることが多い手湿疹では、刺激を避ける工夫、保湿剤を頻回に外用して皮膚のバリア能力を保つこと、アレルゲンとの接触を避けることが必要です。手の刺激を避けるには作業内容を見直し、水仕事はなるべくまとめて行う、直接様々な物品が手に触れないように手袋をするなどが必要です。
一方、手袋によるアレルギー性皮膚炎も認められます。手袋の材質にはゴム、塩化ビニル、ポリウレタンなどがあり、アレルギーの原因をパッチテストで確認して、代わりに使える物を見つけておくことも重要です。
まとめ
何かに「かぶれた」というときには、びっくりするくらい急速に悪化することがあります。接触皮膚炎(かぶれ)では原因物質を見つけることが一番ですが、思わぬ原因が潜んでいることもあります。皮膚症状はいわゆる「湿疹」の所見ですので、発症からの期間やどんなものに触れた可能性があるかなどの問診が重要です。
たかが「かぶれ」ではなく、ひどくなると全身に反応性の発疹が広がったり、ステロイドの内服治療を必要とすることもあります。
また、手湿疹のように原因となるアレルゲンを完全に除去することができない場合には治りにくく、職業に関連したものであれば、仕事内容も考えながら、上手に症状をコントロールしていく必要があります。
信頼できる皮膚科専門医に相談しながら治療を行いましょう。