糖尿病|疾患情報【おうち病院】

記事要約

糖尿病とは体内のインスリンが十分に作用しないことにより、長期的に血糖値が高い状態が持続している疾患。糖尿病の原因・治療方法・改善対策を解説

糖尿病とは

体内のインスリンが十分に作用しないことにより、長期的に血糖値が高い状態が持続している疾患で、原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に分類される。

1型糖尿病

1型糖尿病では膵臓内のインスリンを産生する細胞が破壊されることにより、インスリンの作用が不十分となることが主な原因である。

2型糖尿病

2型糖尿病の原因としては遺伝的要因や、食習慣、運動不足、肥満などをもたらす生活習慣、または年齢などが関連している。

原因(インスリンの働き)

インスリンは摂取した食事に含まれる糖質を体内でエネルギー源として活用するため、血液中から細胞内に糖を取り込む働きをしている。インスリンが体内で不足する、またはインスリンの機能が低下することによって、細胞内に糖質が取り込まれなくなり、血糖値が上昇する。

インスリンの分泌低下は、インスリンを産生する膵臓β細胞の機能低下に起因する。遺伝的体質や加齢などの影響を受ける。また、自己免疫疾患により膵細胞の破壊によりインスリン分泌能が低下することもある。一方で、インスリン機能の低下はインスリンが十分に産生されても、インスリン抵抗性の上昇によりその機能を果たせず、体内では、相対的なインスリン不足となる。インスリン抵抗性とは、筋や脂肪組織細胞での糖の取り込みのが低下し、肝臓での糖新生が抑制されなくなる。この結果、血糖値の上昇に対してインスリンはより多くのインスリンを産生しようとし、やがて疲弊してインスリン分泌能の低下をもたらす。

相談の目安

健康診断の血液検査によって病気がわかることが多く、糖尿病、またはその疑いがあると判断された際には、かかりつけ医のを受診する必要がある。喉の渇き、飲水量の増加、尿量の増加、体重減少、疲れやすさが持続している場合もかかりつけ医への相談が望ましい。

疫学的整理

厚生労働省の調査によると、2017年時点で、日本の糖尿病患者はおよそ329万人であり、男性に多い。糖尿病が強く疑われる者の割合は男性で18.1%、女性で10.5%に及び、年齢とともにその割合が上昇している。また糖尿病による死亡者数は2017年の1年間でおよそ1万4000人である。

図)   糖尿病患者数(入院・通院)の推移 
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海外動向

世界では、4億人以上が糖尿病に罹患していると言われている。2017年には400万人が糖尿病で死亡しており、2045年までに6億人以上が罹患すると推測されている。糖尿病は慢性疾患であり、自己管理による継続的な管理が必要である。そのため、医療者からのアドバイスや教育がプライマリケアにおける中心的な役割である。規則的な血糖測定による血糖値の管理、食事の改善、規則的な運動は糖尿病の合併用や入院を減らすことができるとされている。

症状(潜伏期間・感染経路等)

糖尿病の初期には症状はほとんど現れることはない。病状の進行に伴い、体内の血糖値が高い状態が持続すると、口渇、飲水過多、多尿、体重減少、倦怠感が現れる。糖尿病に伴う合併症がある場合、視力低下、下肢しびれ、歩行時下肢疼痛、勃起障害、無月経、発汗異常、便秘、下痢、足潰瘍、壊疽などが見られる。

重症化しやすい場合

糖尿病は血管の異常を伴うため、あらゆる臓器に障害を起こす可能性がある。その中でも、腎症、神経障害、網膜症が三大合併症であり、これらを伴う場合は、糖尿病に加えて各合併症への治療が必要になり、重症化のリスクも上がる。

治療、重症化防止対策

糖尿病の診断、糖尿病が疑われると判断された場合には、病状に応じた対応が必要である。

治療目標 

体重

BMI 25kg/m2の場合、3%以上の減量

血圧

130/80mmHg 未満 (75歳以上では140/90mmHg未満)

血糖

HbA1c 7.0未満

空腹時血糖 130mm/dl未満

脂質

LDLコレステロール 120mh/dl未満

Non HDLコレステロール 150mg/dl未満

早朝空腹時中性脂肪 150mg/dl 未満

HDLコレステロール 40mg/dl以上

食事療法

食事内容は、病状によらず見直しが必要である。カロリーを減らすことだけが目的ではないため、管理栄養士による指導を受けることが望ましい。

ただし、目安として、身長から換算される目標体重を基準に摂取するカロリーを計算する。

目標体重(kg)の目安

 65歳未満 [身長(m)]2x22                         

 65歳から74歳 [身長(m)]2x(22-25)

 75歳以上 [身長(m)]2x(22-25)            

*75歳以上はそのほかの要因も考慮が必要 

活動量と病状による消費カロリー

軽い運動(1日座って過ごすことが多い) 25-30

普通の作業(通勤や家事など) 30-35

重労働(肉体労働など) 35以上

運動療法

1日に15-30分、週に3回程度の歩行運動などが望ましい。

病状によっては運動が悪影響となる可能性があるため、医師の判断を仰ぐ必要がある。

生活習慣の改善

血管の病気を増悪させる可能性があるため、禁煙する。肥満傾向にある場合は、減量を行う。風邪などを引きやすくなるため、インフルエンザ予防接種や肺炎球菌ワクチンを摂取する。また規則正しい生活、定期的な受診を継続することも重要である。

薬物療法

糖尿病の状態によって内服薬またはインスリン注射による治療が行われる。血液検査結果や、糖尿病の原因、治療の効果などによって治療薬を調整する必要がある。

検査・診断の方法

診断を行うには血液検査が必須であり、診断には複数の結果を考慮する必要がある。

1.以下の《1》から《3》のいずれかに加え、④が確認された場合、糖尿病と診断される。

《1》早朝空腹時の血糖値が126mg/dl以上

《2》75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値が200mg/dl以上

《3》随時血糖値が200mg/dl以上

*いずれか

《4》HbA1cが6.5%以上

2.《1》から《4》のいずれか一つを認めた場合には、糖尿病型と診断される。この場合、別の日に再度検査を行い、再度糖尿病型と判断された場合には、糖尿病と診断される。

《1》早朝空腹時の血糖値が126mg/dl以上

《2》75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値が200mg/dl以上

《3》随時血糖値が200mg/dl以上

《4》HbA1cが6.5%以上

*いずれか1つを満たす結果が2回の検査で確認された場合「糖尿病」と診断される。

3.血液検査によって《1》から《3》のいずれかが確認され、さらに以下の症状がある場合

《1》早朝空腹時の血糖値が126mg/dl以上

《2》75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)の2時間値が200mg/dl以上

《3》随時血糖値が200mg/dl以上

*《1》から《3》のいずれか

  1. 糖尿病を疑う症状(喉の渇き、飲水量の増加、尿量の増加、体重減少)がある
  2. 糖尿病網膜症を診断されている

*AまたはBを認める

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検査・診断の難しさ

血液検査で診断が可能であり、診断は容易と言える。しかしながら、定期的な血液検査を受けない場合には、合併症による症状で発症する場合があり、診断に時間を要する可能性もある。また1型糖尿病は意識障害などで突然発症したり、急性に重症化する可能性があり、早急な診断を要する。

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