月経困難症|疾患情報【おうち病院】
記事要約
月経困難症とは、月経に伴って起こる病的な症状のことで、一般的に月経直前あるいは開始とともに下腹部痛や腰痛などの痛みに加え、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などのさまざまな不快な症状が出現し、月経の終了前や終了とともに症状が消失していく疾患です。月経困難症の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。
月経困難症とは
月経困難症とは、月経に伴って起こる病的な症状のことで、一般的に月経直前あるいは開始とともに下腹部痛や腰痛などの痛みに加え、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などのさまざまな不快な症状が出現し、月経の終了前や終了とともに症状が消失していきます。
月経困難症は、原因となる疾患の有無により機能性月経困難症(原因となる疾患なし)と器質性月経困難症(原因となる疾患あり)に分類され、若い世代では機能性のものが多く、年齢と共に器質性の疾患が増えています。
月経困難症の原因と分類
(1)機能性月経困難症
頸管の狭小やプロスタグランジン過剰により子宮の過収縮が起こることが原因です。その他、子宮の発育不全や月経への不安や緊張などから起こることもあります。
好発年齢は若年で、初経後2〜3年より発症します。原因となる器質的な病気はなく、年齢とともに、あるいは妊娠・出産後に改善していくこともあります。
ただし、将来的に子宮内膜症などを発症し、器質性月経困難症になる可能性もあります。症状は、月経の1〜2日目に強く出ることが多いです。
(2)器質的月経困難症
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症あるいは骨盤内炎症などの疾患が原因です。
初経から5年以上たってから発症し、30歳以上によくみられます。これらの原因の疾患の治療を行わなければ症状は続き、さらに進行すると子宮内膜症による不妊やまれに卵巣がんの発生につながることがあります。症状は、月経前4〜5日から月経の終了後まで続くことがあります。
月経困難症の症状
月経困難症の主な症状は多い順に、下腹部痛、腰痛、お腹の張り、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂鬱感などが見られます。
月経困難症の相談目安
相談の目安として、以下の症状に一つでもあてはまるものがあれば、月経困難症の可能性があるので、婦人科で相談することをおすすめします。
・月経痛がひどい
・月経痛で社会生活に支障が出ている。(学校を休む、仕事を休む、家事ができないなど)
- 月経時以外でも痛みがある
- 排便痛や性交時痛がある
- 痛み止めの薬が効かない月経痛がある
- 痛み止めを使う回数や量が多い
- 妊娠希望だが、なかなか妊娠しない
- 健康診断で貧血がある
月経困難症の疫学的整理
月経困難症の患者の数は、日本では約900万人もいると推計されています。しかし、そのうち実際に治療を受けているにはわずか約6%の方のみで、残りの94%の方は治療を受けていないと報告されています。
月経困難症の診断方法
自覚症状と月経歴や妊娠・出産歴などについての問診を行い、内診、血液検査、超音波検査、細菌培養検査、クラミジア抗原検査、画像検査(CT、MRIなど)、子宮鏡などを必要に応じて行います。
このような諸検査で、器質性疾患を認めれば器質性月経困難症、認めなければ機能性月経困難症と診断されます。
月経困難症の治療法
月経困難症の治療は薬物療法が主に行われます。
(1)薬物療法
- 対症療法:非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)、漢方薬など
- 内分泌療法:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、プロゲスチン、子宮内黄体ホルモン放出システムなど
対症療法として、月経困難症の発生には子宮内膜で産生され子宮収縮を起こすプロスタグランジンの関与が大きいため、プロスタグランジン合成阻害薬である非ステロイド抗消炎鎮痛薬(NSAIDs)が80%の患者さんに有効と言われています。
また、漢方薬を使って治療することもあり、漢方医学的な診察に基づいて芍薬甘草湯、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、当帰建中湯などを使って治療していきます。
内分泌療法として、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬を用います。これは、排卵と子宮内膜の増殖を抑え、プロスタグランジンの産生を抑えていきます。その結果、子宮収縮が抑制され月経痛が軽減されます。重大な副作用として稀に血栓症が起きることがあるので、40歳以上の方、喫煙者や既往歴によっては血栓症のリスクが高く低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬の適応とならない方もいます。その場合は、血栓症のリスクを下げるため黄体ホルモン単剤のホルモン剤を使用します。
また、レボノルゲストレル放出子宮内システムは、内服ではなく子宮内で作用するホルモン剤です。T字型の柔らかいプラスチックを子宮の入り口から子宮内に装着し、そこから持続的に黄体ホルモンをゆっくりと放出させます。それにより、子宮内膜が厚くなるのを抑制し月経量の減少と月経痛の緩和が期待できます。欧米では子宮内膜症や子宮腺筋症に伴う器質性月経困難症や機能性月経困難症を軽減させるために使用されており、日本では2014年から月経困難症に対して保険適用となっています。経産婦に用いることが多く、また避妊効果があるためすぐに妊娠希望する方には適しません。装着を外すと妊娠は可能となります。
(2)手術療法
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などが原因となる器質性月経困難症では、原疾患の治療が必要となります。原疾患の重症度によっては手術療法も選択されます。手術は、腹腔鏡手術、子宮鏡手術や開腹手術などで行います。術式は、原疾患によって異なり、また挙児希望や子宮温存希望の有無によって決定していきます。
(3)カウンセリング・心理療法
保存的療法で効果が得られない場合、心理・社会的背景が影響している可能性があります。特に若年の方では、月経をネガティブなものと捉えていたり、不安や緊張が強くみられたりこともあります。その場合には、カウンセリングや心理療法を行なっていくこともあります。
〈リファレンス〉
公益社団法人 日本産婦人科医会 月経困難症
産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020;公益社団法人日本産科婦人科学会、公益社団法人日本産婦人科
知っておきたい子宮内膜症 Q&A 山脇城先生 監修
百枝 幹雄 内科と婦人科の連携をめざしての提言;日エンドメトリオーシス会誌. 2013;34:101
小林 隆夫 杉浦 和子 わが国における女性ホルモン剤使用に関連する血栓塞栓症の現況
血栓塞栓症の現況.;日本生殖内分泌学会雑誌(2017)22 : 9-15
一般社団法人 日本女性心身医学会 月経困難症(月経痛)
女性の健康推進室ヘルスケアラボ 厚生労働省研究班(東京大学医学部藤井班)監修
バイエルベターライフナビ ミレーナ