知っておいてほしい。女性医師が伝える「緊急避妊」について【医師にインタビュー】

記事要約

「避妊せずに性交渉をしてしまった」「コンドームが破けてしまった」等の理由で産婦人科に駆け込む女性。そんな女性の中には、『緊急避妊そのものを知らなかった』『処方箋が必要と初めて知った』という方も少なくないそうです。自分の身体を・パートナーの身体を守るために知っておいてほしい緊急避妊。今日はその緊急避妊について詳しいお話を伺います。

緊急避妊とは

さて、そもそも緊急避妊とはなんでしょうか?この言葉を初めて聞いたという女性は、意外にも多くいます。緊急避妊とは、避妊をしなかったり、避妊はしたけれど失敗してしまった場合、望まない妊娠を回避するための方法です。

緊急避妊の方法は、現在は一番簡便な内服での方法が主流となっています。

服用は、妊娠を阻止するお薬の効果を考慮し、性交渉から72時間以内の内服が推奨されています。この内服薬を緊急避妊薬(アフターピル)と呼び、病院で処方して受取ることができます。

問診で体調等についてのお話をうかがい、特に問題がないようであれば内診などの診察はなく、内服の説明や注意点を聴き受け取ります。保険適用外のため価格は高めで、10,000円~15,000円程度です。アフターピルは性交渉があった後出来るだけ早くに内服することが大切です。

現在の社会情勢もから、オンライン診療でアフターピルの処方を行う医療機関も増えていますし、そのような状況をご自身の生活に合わせて上手に活用することもできると思います。必要であれば、あまり躊躇せず、早めの受診を心がけていただくと良いと思います

緊急避妊法にはどんな種類があるの?副作用は?

アフターピルの日本での現在の主流は、レボノルゲストレル(商品名:ノルレボ)」というお薬です。2011年にノルレボが承認されるまでは、中用量ピルを用いる「ヤッペ法」が主流でしたが、2011年以降はレボノルゲストレルの使用が普及し始め、近年では中用量ピルに代わり、緊急避妊の第一選択薬として使用されています。第一選択薬である理由は、1回の内服で済み、避妊率も72時間以内の服用で80%以上、24時間以内であれば95%と高いことがあげられます。また、ヤッペ法の際多くみられる副作用(頭痛や吐き気、怠さなど)が殆どないことも理由の1つです。

服用(処方)に年齢制限はなく、妊娠可能年齢であれば内服ができます。上記の2つの他、妊効果が高く120時間以内の服用で効果があるといわれている「ウリプリスタール酢酸(商品名:エラなど )」いう内服薬がありますが、現在日本では認可されていません。医療機関によっては輸入薬剤として販売しているところもあるようです。

また、緊急避妊薬(アフターピル)ではないのですが、効果の高い緊急避妊法として、銅付加子宮内避妊具を子宮内に挿入するという方法もあります。子宮内避妊具とは一般的に「避妊リング(I U D)」と呼ばれているものです。子宮内に挿入することで受精卵の子宮への着床を阻害し、また銅の成分は精子の深部への侵入を抑えるように働きます。いったん緊急避妊具として装着すると、以後は通常の避妊具として、5年間は有効性を保持することができます

服用時の注意点

望まない妊娠を回避するため、年齢制限などはなく処方できるアフターピルですが、以下のような方は避けたほうがいいでしょう。

  • 既に妊娠している方
  • 肝臓の機能が低下している方
  • アフターピルのお薬を以前服用してアレルギーの症状が現れた方

特に持病がない方であれば、過剰にはご心配にならなくても大丈夫なのですが、持病がある方や、持病でお薬を常用されておられる方などですと、緊急避妊薬の内服によって体調が悪化してしまう懸念もあるため、注意が必要です。緊急避妊薬処方前の事前の問診では、必ず担当医に、ご自身の健康状態について伝えるようにしましょう。

ひとまず処方を受けたら、なるべくすぐに内服をしましょう。内服後、体調の不調が現れた時には、処方を受けた医療機関へ相談をするようにしましょう。

どうして避妊できるの?メカニズムは?

緊急避妊として使われるアフターピル。なぜ薬を飲むだけで妊娠を防ぐことができるの?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで避妊に有効なメカニズムについてお話します。アフターピルは次の2つの効果をもっています。

  • 排卵の抑制
  • 子宮への着床を阻害

まず、排卵前に服用すると、排卵を遅らせることができ、受精を防ぐことで避妊します。服用が排卵後の服用だった場合は、子宮内膜の状態を変化させ、着床を妨げる働きで妊娠を回避させるといわれています。

服用後は、次の生理日が来ることが避妊成功のサインといえます。つまりそれまでは避妊に成功したかどうかは分からないのが現状です。次の生理がくれば、受診する必要がありませんが、生理が来なかった場合は、妊娠検査薬を使用するか産婦人科を受診するようにしてください。生理予定日までは通常通りの生活で問題ありません。

実は日本では認知度と普及率が低い!海外との違い

日本では、病院で処方してもらう必要があるアフターピルですが、海外の多くの国では薬局で購入することができます。アフターピルの普及について、日本は後進国であるといえるでしょう。海外では、医師の処方が必要ないだけでなく、価格についてもハードルが低く、入手が比較的容易になっています。日本の女性の中には、避妊に失敗して急いで調べて、初めて緊急避妊(アフターピル)を知ったという方がいるほど、認知度も低めです。

何故、日本ではアフターピルの認知度も海外より低く、入手のハードルも高いのでしょうか?それは、産婦人科医が、妊娠している女性が誤って服用してしまうなどの誤用のリスクを懸念していることが考えられます。そのような誤用のリスクを最小限にするために、現在では医師の処方が必要となっています。

まとめ

予期しない妊娠は、女性にとって身体だけでなく、精神・仕事・日常生活に大きく関わってきます。妊娠を望まない期間は、より確実な避妊効果の期待できる低用量ピルで計画的に避妊をすることをお奨めします。緊急避妊薬(アフターピル)は、低用量ピルの飲み忘れや、失敗してしまった際のレスキュー手段と考えてもらいたいと思います。大切な自分の身体です。パートナーともよく話し合い、男性にも意識と知識をもってもらい、バースコントロールできるように心がけましょう。

<リファレンス>

日本産科婦人科学会「緊急避妊の適正使用に関する指針」日本産科婦人科学会(平成28年改正版) (最終アクセス2021年7月11日)
「C Q403 緊急避妊法の実施法とその留意点は?」(日本産科婦人科学会『産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020』,2020.)P172-173.Emergency Contraception, (The American College of Obstetricians and Gynecologists, 2019) ( 最終アクセス2021年7月11日)

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