脂肪肝|疾患情報【おうち病院】

記事要約

脂肪肝は日本人のうち約3割の人が患っている病気で肝臓疾患の中で最も多いものです。脂肪肝の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

脂肪肝とは

脂肪肝は日本人のうち約3割の人が患っている病気で肝臓疾患の中で最も多いものです。

脂肪肝とは文字通り、中性脂肪が肝臓に溜まる病気のことで肝臓の細胞に脂肪が蓄積することで肝臓の機能が障害されます。アルコールが原因のアルコール性脂肪肝と、それ以外が原因の非アルコール性脂肪肝(NAFLD)に分けられます。肝臓の中に脂肪が沈着しており、アルコールやウイルス、薬剤によるものを除外したものが非アルコール性に当てはまります。

非アルコール性脂肪肝は2001年では有病率18%でしたが、年々増加傾向にあり、2012年の日本の報告では男性32-41%、女性9-18%となっています。さらに、非アルコール性脂肪肝の中で、肝硬変や肝癌に進行する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれるタイプが近年、注目を集めています。C型肝炎やB型肝炎などのウイルス疾患ではなく、アルコールも飲まない人が、知らず知らずのうちに肝硬変や肝癌に進んでいく病気です。 

脂肪肝の原因

全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を脂肪肝と言います。脂肪肝の発症の原因としては過度の飲酒や肥満、糖尿病が原因となる場合が多く、その他、高カロリー輸液、飢え、薬剤やウイルスによっても発症することがあります。

食事により摂取した脂質は、小腸で吸収され肝臓で脂肪酸に分解されます。また糖質は小腸から吸収された後、肝臓で中性脂肪に変わります。脂質や糖質の過剰摂取や運動不足により消費しきれなかった脂肪酸や中性脂肪が肝臓に蓄えられます。また、飲酒により肝臓に中性脂肪が溜まります。

これは肝臓でアルコールが分解される際、中性脂肪が一緒に合成されるためです。また肥満になると肝臓での脂肪酸の燃焼が悪くなり肝臓に中性脂肪が溜まります。さらに、極端な食事制限など無理なダイエットにより低栄養性脂肪肝と呼ばれる脂肪肝になることもあります。

アルコール性脂肪肝:飲酒が原因となる脂肪肝です。飲酒が原因で肝臓に炎症が生じた状態をアルコール性脂肪性肝炎(ASH)といい、肝硬変の前段階になります。

非アルコール性脂肪肝:日本人の脂肪肝の原因で多いのは飲酒によるものより、食事やスナックなどの多量摂取によるものです。肥満や糖尿病、脂質異常症、運動不足などによりインスリンの働きが低下し肝臓に脂肪が溜まりやすくなります。肝障害を伴うようになると非アルコール性脂肪性肝疾患(Non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)と呼びます。さらに進行し、肝硬変や肝癌につながる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になることがあります。脂肪肝の人が全て重症化する訳ではありませんが、早期に発見して原因となる生活習慣や肥満を改善し、経過観察をすることが重要です。

脂肪肝の症状

健康診断や人間ドックの血液検査で肝機能の異常値を指摘されたことで発見されることが多く、自覚症状はほとんどありません。しかし、脂肪肝を放置すると脂肪肝→脂肪肝炎→肝硬変→肝癌という経過を辿ることがあります。慢性肝炎では皮膚の痒みを伴うことがあります。肝硬変へ進行すると黄疸や足の浮腫、腹水による腹部膨満感、意識状態が悪化する肝性脳症などが現れることがあります。肝硬変は肝臓の働きがある程度保たれている代償性肝硬変と肝臓が十分に機能しなくなった非代償性肝硬変の2つに分けられ、非代償性肝硬変では特に症状が強くなります。また、肝硬変になると食道や胃の表面を流れる血管が拡張して盛り上がる食道胃静脈瘤を合併することがあります。発達した静脈瘤は出血しやすく、破裂すると大量に出血して吐血します。

脂肪肝の診断

飲酒歴や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた内服歴など詳しい問診が重要です。さらに、血液検査や腹部超音波検査(エコー検査)、腹部CT、腹部MRIなどの画像検査で、肝障害の程度や肝障害を引き起こすほかの病気(B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害など)の有無を詳しく調べます。また、肝臓に針を刺して組織や細胞を採取し顕微鏡で観察する検査である肝生検を行うことで、脂肪肝の有無や病気の原因を明らかにし確定診断を行います。また、炎症の程度や線維化の程度を調べ、病気がどの程度進行しているかを把握する事が出来ます。

脂肪肝の治療

脂肪肝の治療にはまず生活習慣の改善が必要です。飲酒が原因の場合はアルコールを控えることで改善します。肥満が原因の場合は標準体重を目標に食事療法と運動療法を行うことで血液検査にて肝機能の数値が改善したり、超音波検査で肝脂肪化が改善します。食事療法では低カロリー食と脂肪制限食による体重減少を目指します。就寝2時間前までに夕飯は済ませ、遅くなる場合は炭水化物は控えると良いです。間食は避け、飲み物は水、お茶、ブラックコーヒー等にし、カロリー摂取を控えることが大切です。運動療法として1日30分以上の有酸素運動は肝臓の脂肪を燃焼する効果があります。NAFLD/ NASH診療ガイドラインにおいて、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の合併がある場合はその治療を行うことが重要で、その治療法についても記載されています。またNASHによる肝不全に対しては肝移植が行われることもあります。

脂肪肝の予防

予防においてもアルコール性脂肪肝の場合は何より禁酒、減酒が重要です。また、生活習慣を改善し、バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養と睡眠が大切です。自覚症状がないことがほとんどであり、健康診断や人間ドッグを定期的に受けることが脂肪肝の早期発見に繋がり、必要に応じて早めに対応することが可能になります。

また、血糖値が急上昇すると血糖値を下げるためのホルモンであるインスリンが大量に分泌されます。インスリンは余った糖を中性脂肪として蓄える働きがあるため、脂肪肝を防ぐには血糖値の急激な上昇を避けることが大切です。食事の際は野菜、肉や魚などのタンパク質、炭水化物の順に食べることで血糖値の上昇が穏やかになりインスリンの過剰な分泌を抑えることが出来ます。

<リファレンス>

日本消化器病学会・日本肝臓学会 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(改訂第2版)
日本消化器病学会 患者さんとご家族のためのガイド NAFLD/NASHガイド
日本内科学会雑誌 101(8), 2316-2321, 2012-08-10
日本内科学会雑誌 103(12), 3118-3125, 2014 

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