蕁麻疹|疾患情報【おうち病院】
記事要約
皮膚の一部が突然に赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気です。蕁麻疹の原因・症状、治療方法・改善対策を解説。
蕁麻疹とは
痒みのある皮疹が出たり消えたりする、ひどく出ていたのに受診するときには消えてしまった、こんな経過は蕁麻疹です。蕁麻疹ではそれぞれの発疹は数時間で消退しますが、別のところに新生するので、常にどこかには発疹が出ていることもあります。
蕁麻疹の定義は「かゆみを伴う一過性の紅斑と膨疹が出没する」とされ、日常非常に多く見られる疾患です。個々の発疹は24時間以内にあとかたもなく消退することが基本なので、24時間以上続く場合には他の疾患を鑑別する必要があります。
典型的な場合には診断は容易ですが、原因が不明なことも多く、症状も多彩なので上手な付き合い方を知っておくべき疾患です。
蕁麻疹の症状
「かゆみを伴う紅斑で、個々の皮疹は24時間以内に消失する」のが一番大きな特徴です。蕁麻疹の皮疹は「膨疹」と呼ばれる特徴的な皮疹を呈します。
膨疹というのはみずみずしい、ピンク色の扁平に隆起した紅斑で、円形ないし不整形で散在するばあい、融合する場合、ひどくなると地図状に体中に広がる場合もあります。「蚊に刺されて腫れたときのような赤い発疹」と表現すると一番わかり易いようです。
また、強いかゆみで掻爬したとおりに線状にこのような紅斑を生じたり、力がかかったところにだけ紅斑を生じる場合もあります。
蕁麻疹は経過により急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。1か月を経過するものを慢性蕁麻疹とよび、この場合には原因は特定できないことがほとんどです。
原因
多くの蕁麻疹の原因は不明です。
蕁麻疹は何らかの原因で、皮膚にある肥満細胞という細胞から顆粒が放出され、さらにヒスタミンという物質が組織内に増加します。ヒスタミンは血管に働き、小さな血管を拡張させ、血漿という血液成分が血管の外に出やすくなります。このため蕁麻疹の「膨疹」とよばれる発疹は、みずみずしい浮腫状の紅斑なのです。さらに感覚を感じる神経が刺激されるので、かゆみ、膨疹を生じます。
その背景には、感染、疲労、ストレス、アトピー素因など様々な要因が関与していることが知られています。しかし、これらの要因の一つですべてを説明することは難しく、いずれも該当しない場合や複数の要因が関連していることもあります。一般的に言われている増悪、背景因子には下記のようなものがあります。
蕁麻疹の病態に関与しうる増悪・背景因子
- 感染(細菌、ウイルス、寄生虫など)
- 疲労
- 時刻(日内変動、夕方から明け方にかけて増悪)
- ストレス
- IgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体(慢性蕁麻疹)
- アトピー性皮膚炎(コリン性蕁麻疹に対して)
- 食物中の防腐剤、人工色素、サリチル酸(不耐症に対して)
- 食物中のヒスタミン(サバ、マグロなど)
- 仮性アレルゲンを含む食品(豚肉、タケノコ、もち、香辛料など)
- 薬剤(鎮痛消炎剤、防腐剤、降圧薬の一部、造影剤など)
- 膠原病および類縁疾患(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群など)
- 寒冷凝集素(寒冷蕁麻疹に対して)
- 蕁麻疹を伴う症候群
- その他の内臓病変
診断
蕁麻疹の診断は症状や経過から行われます。一過性の紅斑、膨疹の出没が確認できれば診断は容易です。原因を探るための血液検査が行われることはありますが、ほとんど特定されることはなく、経過から判断となることがほとんどです。特発性の蕁麻疹に対する各種外来抗原の特異的IgE検査の意義はあまり認められません。
蕁麻疹の病型を確定するために負荷試験や除去試験を行うことがありますが、目的や意義を考えての実施が望ましいとされています。
蕁麻疹の分類
蕁麻疹には様々な病型がありますが、その分類はまだ統一されていません。日本皮膚科学会のガイドラインでは明らかな直接的誘因がなく膨疹がするものを特発性の蕁麻疹とまとめています。
また、蕁麻疹は経過により急性蕁麻疹と慢性蕁麻疹に分けられます。1か月を経過するものを慢性蕁麻疹とよび、原因は特定できないことが多くなります。経過と原因により下記のように分類されます。
蕁麻疹の分類
I.特発性の蕁麻疹(明らかな誘因無く毎日のように繰り返し症状が現れる)
(1)急性蕁麻疹:発症して1か月以内。
(2)慢性蕁麻疹:発症して1か月以上経過したもの。原因を特定できないことが多い。
II.特定刺激ないし負荷により誘発できることができる蕁麻疹(刺激が加わったときに現れる)
(3)外来抗原によるアレルギー性の蕁麻疹:食物や薬剤、植物などに含まれる成分が抗原となる。
(4)食物依存性運動誘発性アナフィラキシー:特定の食物摂取後2−3時間以内に運動すると、蕁麻疹、気分深い、呼吸 困難などの症状を起こす。
(5)不耐症による蕁麻疹:アスピリンなどの消炎鎮痛薬、防腐剤、サリチル酸を多く含む食品などによる。
(6)物理性蕁麻疹・機械性蕁麻疹:冷たい刺激により生じる(寒冷蕁麻疹)、日光にあたることにより生じる(日光蕁麻疹)など、物理的刺激により生じる。
(7)コリン性蕁麻疹:入浴や運動、精神的緊張などの発汗刺激により起こる。一つ一つの発疹が1〜4mmと小さい。
(8)接触蕁麻疹:皮膚に何らかの物質が接触すると、その部位に一致して生じる。
III.特殊な蕁麻疹または蕁麻疹類似疾患
(9)血管性浮腫:口唇やまぶたなどが突然腫れて、2〜3日かけて元に戻る。
(10)蕁麻疹様血管炎:蕁麻疹に似るが、個々の皮疹は24時間以上持続し、病理組織学的に血管炎を認める。
(11)色素性蕁麻疹:褐色の斑が単発ないし多発する。皮疹部をこすると膨疹を生じる。
蕁麻疹の検査
- 特発性蕁麻疹:経過や所見から関連性が疑われるときに適宜行います。蕁麻疹以外に明らかな症状がない場合にはむやみな検査は行いません。
- 外来抗原によるアレルギー性蕁麻疹:原因アレルゲン検索は血液検査などで行えるが、これで陽性であっても原因とは限らないので、経過や負荷試験、除去試験などにも基づいて判断します。 食物依存性運動誘発性アナフィラキシーでは食物と運動負荷をかけての検査があります。
- 急性蕁麻疹で発熱やその前に感冒様症状があった場合には何らかの感染が誘因となっている場合があります。血液検査にて炎症反応が高いこともありますので診断や治療に有用です。
注意すべき状態 アナフィラキシー症状としての蕁麻疹
突然出現した紅斑、膨疹で皮膚以外の症状、特に喘鳴や呼吸困難、脈の不整、血圧低下などの症状を呈する場合にはアナフィラキシーと呼ばれ、ショック状態にいたることがあります。
ハチアレルギーでもみられますが、特定の薬剤や食物などにアレルギー反応を生じたときに、その皮膚症状として蕁麻疹を生じることがあります。蕁麻疹以外の上記症状を伴っているときには早期の受診が必要です。
治療
《1》治療方針
蕁麻疹の多くは特発性であり、薬物療法の第一選択は抗アレルギー薬です。なんらかの刺激誘発による蕁麻疹と診断できた場合には原因を除去、避けることが必要です。
《2》薬物療法
抗アレルギー薬内服が治療の基本です。効果が乏しい場合には薬を変更したり、増量することもあります。
急性蕁麻疹の場合は数日から数週間の治療でおさまります。しかし、慢性蕁麻疹の場合には、収まってからさらに1〜2か月内服を続け、症状が出ないことを確認してから少しずつ減量する方針をとります。内服を中止できるまでは数か月から数年におよぶこともあります。
《3》外用療法
かゆみ止めとして用いることはありますが、根本的な治療薬ではありません。
生活の注意
一番多い特発性の慢性蕁麻疹では、ほとんどの方が原因の特定は困難です。
しかし、蕁麻疹の誘発要因となるような刺激によって悪化することはしばしば認められますので、こういった刺激は避けることが望ましいでしょう。例えば温度差や日光暴露、機械的な刺激などです。急な気温差を避ける、入浴は温めの湯で短めに、強い日差し、ストレス要因を避けるといった注意も必要です。
まとめ
蕁麻疹の中でも、慢性蕁麻疹は非常によくある疾患です。
実際には、毎日皮疹がでるわけではない、ひどくなったときに抗アレルギー剤を内服すれば大丈夫という方にはそのような方針で様子をみることもあります。しかし、毎日のように出る、皮疹が出ることがストレスになるという場合には、症状がなくてもしっかり内服を続けて、出ない状態を保ちながら少しずつ薬を減量する、内服する間隔を開けていく、という方針をお勧めします。
一方、非常に皮疹が広範囲にでたり、皮疹以外にも全身症状を伴う場合などにはショックにいたることがあり、速やかな受診が必要です。
症状を適切に判断しての治療が必要です。正しい方針を示してくれる信頼できる医師とともに治療に望んでほしいと思います。