高カルシウム血症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が10.6mg/dl以上と非常に高い状態を指します。高カルシウム血症の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

高カルシウム血症とは

血液中のカルシウム濃度が10.6mg/dl以上の状態を高カルシウムといいます。補正カルシウム値が12mg/dlを超えるあたりから症状が出現します。

(補正カルシウム値については、高カルシウム血症の診断の項を参照)

高カルシウム血症の原因

その原因として、原発性副甲状腺機能亢進症と悪性腫瘍に伴う高 Ca 血症が 90%以上を占めると報告されています。その他、カルシウム/ビタミンD摂取過剰、長期臥床、サルコイドーシス、珪肺症、結核、パジェット病などの原因も報告されています。

高カルシウム血症の疫学的整理

高カルシウム血症を示す例は、検診などで偶発的に発見される場合や尿路結石などを契機に発見されることが多く、発症頻度は1000人〜数1000人に 1 人程度といわれています。1)

高カルシウム血症の症状

脱水や倦怠感、傾眠傾向、うつ状態、意識低下、近位筋の筋力低下、悪心・嘔吐、食欲不振、膵炎、消化性潰瘍、便秘、高血圧、口渇、多飲、多尿などが症状として挙げられます。

高 Ca 血症の程度が軽い場合には無症状ですが、急激あるいは重度の高Ca血症では、意識障害を呈した場合、生命の危険を伴い、高Ca血症クリーゼと呼ばれ緊急治療を要する病態となります。

高カルシウム血症の診断

血液検査にて血清総カルシウム(イオン化カルシウム)、アルブミン、電解質、BUN、Cre、リン、PTH、アルカリホスファターゼの測定などを行います。胸部X線では、 結核、サルコイドーシス、珪肺症など大半の肉芽腫性疾患のほか、原発性肺癌や、肩関節、肋骨、および胸椎の溶骨性病変やパジェット病の病変の有無を調べることができます。

*低アルブミン血症を伴う場合、以下の式でカルシウム値を補正する必要があります。

【補正カルシウム濃度を算出する計算式】 補正カルシウム値(mg/dL)=実測カルシウム値(mg/dL)+4-Alb(g/dL)

高カルシウム血症の治療

重症度に応じて、以下のような治療を行います。血清Ca<11.5mg/dLで、症状が軽度で腎疾患がない場合、リンの経口投与を行います。血清Ca<18mg/dLの場合、より迅速な是正のため、生理食塩水とフロセミドを静脈内投与します。11.5mg/dl<血清Ca<18mg/dL、および・または中等度の症状がある場合、ビスホスホネートまたはその他のカルシウム降下薬を投与します。血清Ca≧18mg/dLを超える場合、血液透析を行います。

高カルシウム血症の原因が、中等度の進行性原発性副甲状腺機能亢進症、ときに軽症の副甲状腺亢進症による場合、副甲状腺の外科的切除を行います。二次性副甲状腺機能亢進症による場合は、リンの制限および吸着剤投与、ときにカルシトリオールの投与を行います。2)

高カルシウム血症相談の目安

血液検査でカルシウム高値を指摘されたとき、喉が渇く、尿が多い、だるさ、眠気、筋力低下、悪心・嘔吐、食欲不振、等の症状があるときは内科、内分泌代謝内科の受診をお勧めいたします。

<リファレンス>

1)Dokkyo Journal of Medical Sciences 39(1):45〜55,2012 当院における高カルシウム血症の病因・病態の解析と治療 獨協医科大学 内科学(内分泌代謝)作田亜有子、飯嶋寿江、百目木希実、鈴木國弘、加瀬浩之、川越宣明、笠井貴久男

2)MSDマニュアルプロフェッショナル版 高カルシウム血症:James L. Lewis III , MD, Brookwood Baptist Health and Saint Vincent’s Ascension Health, Birmingham