高血圧症とは|疾患情報【おうち病院】

記事要約

高血圧症とは?原因・症状と治療方法・改善対策を解説

高血圧とは

血圧とは心臓から全身に送り出された血液が血管の壁を押す圧力のことです。上の血圧は心臓が収縮して血管に最も強い圧力がかかっているときの値で、収縮期血圧といいます。下の血圧は、心臓が拡張しているときに血管にかかる圧力の値で、拡張期血圧といいます。血圧は、心臓が血液を押し出す力と血管の抵抗で決まっていて、血管の柔らかさも関係しています。血圧は体内のホルモンなどの因子にも影響を受けており、常に変動しています。通常は朝の目覚めとともに上昇し、日中は高く、夜間睡眠中は低くなります。また冬は夏よりも高くなります。血圧は一般に年齢とともに高くなります。年齢とともに動脈硬化が進むと、血管の柔らかさも血圧に関与しており、上の血圧は高くなり下の血圧は低くなります。

高血圧というのは血圧が高い状態です。一度血圧が基準値以上であっても高血圧症と診断にはいたりません。繰り返し測って血圧が正常よりも高い場合をいいます。血圧の値のうち上の血圧が140mmHg以上の場合、または下の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれら両方を満たす場合に診断されます。

原因

高血圧症には、原因が明らかでないものを本態性高血圧症といい、高血圧症の約9割の患者さんがこれにあたります。本態性高血圧症は遺伝的な因子や塩分の過剰摂取、肥満、ストレス、過剰飲酒、運動不足、ミネラル不足、喫煙などの生活習慣といった環境因子が関与しており、生活習慣病と言われています。

一方で体の中に血圧上昇を起こすような原因となるような病気がある場合に、二次性高血圧症といいます。腎動脈狭窄症、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫といった病気です。これらは原因となるような病気の治療により高血圧症の治療が期待できるものがあります。

高血圧症は家族性の要因が6割あると言われています。遺伝的要因、家族で似た生活習慣(塩分の過剰摂取、過食偏食による肥満、運動不足等)の可能性が考えられます。ご家族の中に高血圧症で治療中の方がいる場合は定期的に血圧をチェックすることも大切です。

疫学的整理

高血圧症は我が国で患者数が最も多い病気で、現在約4300万人の患者さんがいると推計されています。その中で適切に血圧がコントロールされている患者さんは1200万人程度といわれています。残りの方々は治療をしても目標の血圧に達していない人だけではなく、高血圧症であると知らない人、知っていても治療をしていない人がかなり含まれています。

症状

高血圧はほとんどの人で自覚症状がありません。多くは検診での血圧測定で高血圧を指摘される場合が多いでしょう。

高血圧状態が長く続くことで血管はいつも高い圧がかかることになります。その負荷の影響で次第に血管の壁は厚く、硬くなっていきます。これが高血圧による動脈硬化です。動脈硬化は全身の血管に起こっていき、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、眼底出血などの様々な臓器に影響を及ぼしていきます。また血管のみならず、心臓は高い血圧に対してさらに強い圧で血液を全身に送らなければならず負荷がかかり、心臓肥大がおこり、心不全を引き起こすこともあります。こうした合併症を予防するためにも高血圧の人は血圧を正常化することが必要です。

診断・検査

血圧の測定を行いその値で診断します。我が国では一般的に診察室で測定した血圧と家庭で自分で測定した家庭血圧が用いられます。

診察室血圧の測定は数回の結果をもとに判定します。そして、上の血圧/下の血圧のどちらか一方でも140/90mmHg以上であれば高血圧と診断されます。また家庭血圧の値が5〜7日の平均どちらか一方でも135/85mmHg以上である場合も高血圧と診断され、家庭血圧の値のほうが優先して用いられます。

また健康診断や診察のときには血圧は正常なのに家庭や職場での血圧が高い人がいます。そのような例を仮面高血圧とよびます。仮面高血圧の人は、診察室血圧も家庭血圧もいずれも高い持続性高血圧のひとと同じくらい脳心血管病のリスクが高いと言われ、治療が必要です。そのような仮面高血圧の診断のためにも家庭血圧測定は重要です。喫煙者、精神的ストレスの高い人、身体的活動度の高い人、アルコール多飲者は仮面高血圧になりやすいので注意が必要です。

家庭血圧の測り方

家庭血圧の測定は高血圧の診断に重要なだけでなく治療の効果を高めるためにもとても大切です。家庭血圧は朝と夜、1日2回椅子に座って測定します。原則として2回測ってどちらも記録します。

朝:起床後1時間以内、トイレを済ませてから
夜:就寝前

いずれも1,2分の安静後、椅子に座ってカフ( 血圧計で腕に巻くバンド)の高さと心臓の高さを合わせましょう。しずかで落ち着けるところで測りましょう。測定前はタバコ、飲酒、カフェインは摂らないようにします。測定中は話をしたり、動いたりしないようにしましょう。

血圧計は手首に巻くタイプより上腕にカフを巻くタイプがおすすめです。

生活習慣の見直しによる改善

高血圧は食事、運動、嗜好品などの生活習慣を修正することで予防や改善がのぞめます。

《1》減塩

日本人の食事は食塩摂取量が多く、減塩による降圧効果が大きいと考えられます。実際、入院して食事が病院で食塩量を管理されたものに変わったら血圧が改善する患者さんも多くいらっしゃるほどです。高血圧の人は1日6g未満が目標とされています。工夫としてはコショウや生姜、柑橘類やお酢などの酸味をあわせる、低塩の調味料を使う、外食や加工品を控える、麺類の汁は残すなどです。

《2》肥満の改善

BMIの正常範囲は18.5〜25.0(kg/m2)で肥満者はBMI25未満を目指して減量します。肥満は高血圧以外にも糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、腎障害、肝障害などの病気の原因となります。ただし、急激な体重減量は体への負荷になりますので人それぞれにあった減量方法で時間をかけて減量することが大切です。適度な食事量と自分にあった運動を取り入れて長期的な習慣とし、適正な体重を維持できるようにするようにしましょう。

《3》運動

高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病の予防、治療には速歩き、スロージョギング、ランニングといった有酸素、持久性運動が推奨されています。運動の強さも少し息が切れる程度にとどめましょう。あまりきつい運動はむしろ血圧が高くなる可能性があり高血圧の方にはおすすめできません。目安としては毎日30分程度です。

高血圧の患者さんの場合は重症度や合併症の有無で運動や労さの許される範囲が変わります。またその他持病のある方の場合も運動できる程度がありますので、まず医師にどの程度、運動しても良いのか確認をしましょう。

《4》節酒

大量飲酒は血圧を上げ、脳卒中や肝障害の原因となります。その他に心房細動という不整脈、夜間睡眠時無呼吸などへの関連が言われています。アルコール量は男性で20〜30ml/日以下、日本酒なら1合、ビール中瓶1瓶、焼酎半合、ウイスキーダブルで1杯、ワイン2杯とされています。女性はその約半量の10〜20ml/日以下に控えるようにしましょう。

《5》禁煙

たばこによって血管が収縮し血圧が上がるばかりでなく、血流が悪くなり動脈硬化の原因となります。

《6》寒暖差

暖かい部屋から急に寒いところへでると血管が収縮し血圧が上がります。冬は特に室内と外気の差を極力減らす工夫も大切です。外出時はマフラーやマスク、手袋等をつけましょう。浴室、トイレ、玄関など居間との温度差を少なくするため暖房や着衣に気をつけましょう。入浴も血圧の変動に関与します。特に冬は寒い脱衣所で血圧が上がり、熱いお風呂でさらに上昇、お風呂に浸かっていると徐々に下がりますが、風呂からあがると血圧は大きく下がります。ぬるめのお風呂で長湯は控えるようにしましょう。

《7》排泄

便秘傾向のひとはいきむ時間が長いと血圧が上がります。日頃から便秘を予防しましょう。

お薬での治療

高血圧は前述のような生活習慣(食事、運動、肥満対策、禁煙)を改善しても血圧が目標値まで下がらない場合にお薬での治療を行います。高血圧には降圧薬という血圧を下げるお薬を服用して治療します。

降圧薬治療における薬は主にカルシウム拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬を用います。これらの薬は単剤あるいは併用をして治療しますが、目標血圧に達しない場合はβ遮断薬、アルドステロン拮抗薬、直接的レニン阻害薬など他の薬を追加して治療することもあります。

カルシウム拮抗薬:血管を広げて血圧を下げる

ARB、ACE阻害薬:血管を収縮させる物質をブロックして血圧を下げる

利尿薬:血管から塩分と水分を尿として排出して血圧を下げる

β遮断薬:心臓の過剰になった働きを抑えて血圧を下げる

低用量で一剤から始め、治療効果を見ながら増量したり種類の違う薬を追加して組み合わせて治療したりします。治療前に高血圧の程度が重症である場合には2剤から始める場合もあります。最近では2種類以上の薬が合わさった合剤が発売されており患者さんの服薬の負担が少なくなるように工夫されています。

一旦始めた薬での治療も生活習慣の改善などで血圧が改善し、お薬を減量したり、中には薬をやめることができる患者さんもいらっしゃいます。ただし薬の減量や中止は主治医とよく相談してから行い、勝手にしないようにしましょう。

<リファレンス>

高血圧治療ガイドライン:日本高血圧学会

高血圧の話:日本高血圧学会

高血圧 :e-ヘルスネット 厚生労働省

高血圧、腎臓病:循環器病情報サービス 国立循環器病研究センター

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