副甲状腺機能低下症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺ホルモンの分泌が低下することにより、血中カルシウム濃度の低下やリン濃度の上昇などがもたらされる疾患の総称です。副甲状腺機能低下症の原因や診断、生活上の注意点などについて医師監修の基解説します。

副甲状腺機能低下症とは

副甲状腺とは、甲状腺(喉仏の骨よりやや下の方にある臓器)の裏側にある小さな米粒大のホルモンを出す臓器で、通常は、左右に上下2つずつ合計4つあります。そこから、体の中のカルシウムのバランスを整える副甲状腺ホルモンというホルモンが分泌され、体の中の骨や腎臓に働きかけ、血中カルシウム濃度を上昇させます。副甲状腺機能低下症は、この副甲状腺ホルモンの分泌が低下することにより、血中カルシウム濃度の低下やリン濃度の上昇などがもたらされる疾患の総称です。

副甲状腺機能低下症の原因

遺伝子異常、頸部手術後、肉芽腫性疾患、免疫異常など多岐に渡ります。

副甲状腺機能低下症の疫学的整理

日本には2300名程度の患者さんがいらっしゃると推測されます。副甲状腺機能低下症は国の指定難病の一つで、現在日本では約307名(参考:令和2年指定難病受給者証所持者数)の方が難病指定を受け治療を受けています。

副甲状腺機能低下症の症状

低カルシウム血症による症状は、口周囲や手足などのしびれ感・錯感覚(触覚を痛み・ぴりぴり感として感じるなど異なった感覚として認識される感覚)、テタニーと呼ばれる手足の筋肉のけいれん、喉頭けいれん、全身けいれんが問題となります。これに加え、白内障や大脳基底核の石灰化、抑うつ、不整脈、皮膚や毛髪の異常、歯の発育異常など、多彩な症状を呈します。

副甲状腺機能低下症の診断

血液検査で低カルシウム血症(血清補正値8.5mg/dl未満、高リン血症(4.5mg/dl以上)があり、intact PTHが30pgml以下なら特発性が考えられ、30pgml以上なら偽性が疑われます。確定診断にはPTH負荷試験(Ellsworth-Howard試験)を行います。

低カルシウム血症の時に見られる所見としては、クボステック徴候(顎関節部を叩いた時の口輪筋の収縮)、トルーソー徴候(上腕部緊縛による助産婦手位:手関節屈曲、母指内転、中手関節屈曲と指の伸展)、心電図異常(QT延長、AVブロック)、大脳基底核の石灰化などがあります。

副甲状腺機能低下症の治療

活性型ビタミンD3製剤を服用することで、血液中カルシウム濃度をほぼ正常に維持する事が出来ます。けいれんなどの症状がありコントロールが難しい場合には、カルシウム製剤が併用されることがあります。血液カルシウム濃度の低下が改善すると、上記の症状は殆ど見られなくなります。活性型ビタミンD3製剤による治療を継続して血液中カルシウム濃度をほぼ正常に維持することにより、多くの患者さんは殆ど自覚症状もなく通常の生活を送る事ができます。

副甲状腺機能低下症相談の目安

手足の筋肉のつっぱりやけいれん、手足や口の周りのしびれ感があるとき、触覚を痛み・ぴりぴり感として感じるなど異なった感覚として認識される感覚があるとき、内分泌代謝内科や内科の受診をお勧めいたします。

副甲状腺機能低下症の生活上の注意点

薬の内服を中断すると、血中カルシウム濃度が低下し症状が出現する場合がありますので、定期的な内服が極めて重要です。また、同じ量の薬を服用していても、年齢や腎機能の変化などにより血中カルシウム濃度が変動することがあります。このため、定期的に医療機関を受診し、血中カルシウム濃度などにより治療法の評価をする必要があります。

<リファレンス>

難病情報センター副甲状腺機能低下症(指定難病235)
一般社団法人日本内分泌学会 特発性副甲状腺機能低下症

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