伝染性紅斑(リンゴ病)|疾患情報【おうち病院】

記事要約

伝染性紅斑(リンゴ病)とは、4~5歳の幼児や、小児を中心に発生するウイルスが病原体の感染症で、成人になって初めて感染すると症状が重くなることもあります。伝染性紅斑(リンゴ病)の原因・症状と治療方法・改善対策を解説

伝染性紅斑(リンゴ病)

ポイント

  • 小児だけでなく成人にもみられ、異なる発疹がみられます
  • 成人では手足の浮腫、関節痛を伴いながびくことがあります
  • 小児では発疹出現時には感染力はほとんどありません
  • 妊婦の感染には注意が必要です

小児では頬がリンゴのように真っ赤になることからリンゴ病と呼ばれます。正式名称は「伝染性紅斑」、原因はウイルスであり、そのまま「ヒトパルボウイルスB19」感染症小児期に罹患することが多いのですが、成人、特に小児との接触の機会が多い若い女性に集団発生することもあります。

成人では小児と異なる症状がみられ、症状が長引くこともあります。また、妊婦が感染すると胎児の異常をきたすことがありますので、注意すべき疾患です。

症状と経過

小児の伝染性紅斑

感染1週間くらいから軽度の感冒様症状がみられることがあり、さらに1週間ほどで皮疹を生じます。全身状態は一般に良好で、皮疹以外は無症状のことも多いです。

小児の皮疹は特徴的であり、顔面に蝶形ないし平手打ち様の紅斑がみられます。発疹は次第に上腕外側、体幹、大腿にも拡大、融合しさらに網状ないしレース模様を呈します。

皮疹は5〜7日で自然消退しますが、その後も日光照射や入浴などで再燃することもあります。

成人の伝染性紅斑

成人では小児と異なり、顔面の皮疹は目立ちません。前腕を中心として、四肢、体幹の細かい点状の丘疹が主体となることが多く、ときに融合し、風疹や麻疹に類似することもあります。

皮疹出現前に関節痛や筋肉痛などの全身症状、関節の腫脹、手足の浮腫などがみられることがあります。また、このような症状が数週間にわたって持続することがあります。

原因・感染期間、動向

ヒトパルボウイルスB19が原因です。感染力は強いですが、不顕性感染(無症状で知らないうちに感染している)も多くみられます。

感染経路は飛沫感染であり、感染すると飛沫感染で気道から感染すると、1週間ほどでウイルスが血液中に拡大します。感染から皮疹出現までの期間は10日から2週間程度あります。ウイルスの排泄は感染後2週間ほどの時期で、紅斑出現時にはウイルス排泄は減少し、感染力はほぼなくなっています。

伝染性紅斑は小児科定点医療機関から報告される5類感染症で、発生動向が調査されています。年間を通じて発症がみられますが、4〜6年ごとに大きく流行する年では6〜7月にピークを持つとされる。直近の大きな流行は2015年にみられています。

リスクが高い場合

1)溶血性貧血の方

ヒトパルボウイルスB19は感染すると、赤血球を造る細胞に異常をきたすことがあります。正常の赤血球の寿命を持っていれば問題はありませんが、溶血性貧血を持つ方など、寿命の短い赤血球の状態では急激な貧血、全身状態の悪化をきたすことがあり注意が必要です。

2)妊娠中の方

妊娠初期には流産の原因になりえます。

妊娠中期から後期の感染では、造血のさかんな胎児にこのウイルスが経胎盤的に感染すると、胎児が貧血に陥り、胎児水腫の状態となり、ときに胎児死亡をきたします。感染が判明したら、慎重な経過観察は必要です。

診断・検査

基本的には症状からの診断が可能です。小児では検査を行うこともほとんどありません。

ウイルスに対する抗体は感染してから早期に出現するIgM抗体と、その後に出現するIgG抗体があります。感染してから皮疹出現までの期間があるので、IgM抗体は診断に有用ですが、保険適応外検査になります。実際には急性期の診断にはPCR法による血液中のウイルスDNAの検出が有用です。現在は妊婦のみ保険適応となっています。

前述のように妊婦の感染は問題になります。成人の伝染性紅斑は症状が多彩ですので、少しでも疑われたら検査を行う必要があります。

治療の一般方針

特別な治療は必要としません。

成人で発熱や関節痛を伴う場合には、鎮痛剤やかゆみ止めなど、それぞれの症状に対する対症療法を行います。

生活指導と学校保健上の扱い

伝染性紅斑の皮疹は日光暴露により再燃する傾向があり、感染後しばらくは強い紫外線を避け、日焼け止めを使うなどの遮光が必要です。

学校保健においては学校感染症の第3種の中の「その他の感染症」に規定されています。感染症であること、顔面の皮疹が目立つこと、いったん消退してもまた再燃することがあることなどから、学校への出席停止期間についての意見は様々でした。現在は、顔面をはじめ皮疹の出現時期にはウイルス排泄が見られないことが多いため、特に登園や登校の停止は必要ないとされています。

しかし、貧血のリスクがある方、免疫不全の方、妊婦との接触がないよう注意が必要です。

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