腸閉塞・イレウス|疾患情報【おうち病院】

記事要約

腸閉塞とは何らかの原因により食物や消化液などの内容物がつまり、肛門側に移動できなくなり通過障害が起こった状態のことをいいます。イレウスとは腸管の一部あるいは広範囲に麻痺または痙攣が生じ腸がスムーズに動かなくなることで内容物の流れが止まってしまった状態のことです。腸閉塞・イレウスの原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

腸閉塞・イレウスとは

腸閉塞とは何らかの原因により食物や消化液などの内容物がつまり、肛門側に移動できなくなり通過障害が起こった状態のことをいいます。イレウスとは腸管の一部あるいは広範囲に麻痺または痙攣が生じ腸がスムーズに動かなくなることで内容物の流れが止まってしまった状態のことです。症状としては腹痛や嘔気・嘔吐、おなかが張ってガスや便が出なくなる腹部膨満感などの症状があります。最も多い原因は過去の腹部手術による腸管の癒着であるといわれています。

腸閉塞・イレウスの原因

日本国内では「イレウス=腸閉塞」ということで理解されることが多いのですが、近年、『急性腹症診療ガイドライン』では「腸閉塞」と「イレウス」を使い分けることが提案されており、厳密には腸管が機械的/物理的に閉塞した場合を「腸閉塞」、麻痺性のものを「イレウス」と呼ぶびます。腸閉塞は大きく分けて2つあります。腸管の内容物が物理的に通過できなくなる機械性腸閉塞と、腸管の血流や神経の障害で通過ができなくなる機能性腸閉塞です。機械性腸閉塞は腸管の血流が悪くならない単純性腸閉塞と、腸管の血流が悪くなる複雑性(絞扼性)腸閉塞に分類されます。約9割は機械性イレウスであり、過去に一度でも腹部手術(開腹術もしくは腹腔鏡下手術)を受けたことがある場合はお腹の中に癒着があります。機械性イレウスの原因として過去の腹部手術後の癒着・索状物によるものが最多です。その他の原因としてヘルニアの嵌頓、腸捻転、腸重積、異物、高度の便秘など様々なものがあります。

  • 機械性腸閉塞
    物理的に腸管が閉塞している状態で、単純性は血行障害を伴わず複雑性は血流障害を伴います。

  • 単純性腸閉塞
    単純性腸閉塞のほとんどは術後の腸管癒着による癒着性の腸閉塞で主に小腸が閉塞します。また大腸が閉塞擦る場合は、大腸癌によるものや便秘によるものが原因となります。

  • 複雑性腸閉塞
    複雑性腸閉塞は腸管が捻じれて血流が悪くなる絞扼性腸閉塞ともいいます。腸管が捻じれるため血流障害を伴い、突然の腹部の激痛が出現し、時間の経過とともに腸管が壊死してしまうため緊急で治療が必要となります。

  • 機能性腸閉塞
    腸管の正常な動きが悪くなって起こる麻痺性と、腸管が痙攣して起こる痙攣性の2つに分類されます。

  • 麻痺性腸閉塞
    腹部手術や腹膜炎による神経の障害で腸管運動の麻痺を引き起こします。

  • 痙攣性腸閉塞
    中毒などで腸管の一部が痙攣して内容物の移動が障害されます。

腸閉塞・イレウスの検査

まずは問診により症状が現れた時期や腹痛の程度、腹部の手術歴の有無、癌・ヘルニア・炎症性腸疾患などの既往歴の有無、内服薬の有無などについて確認します。続いて腹部診察をおこないます。腹部の聴診では機械性イレウスでは腸雑音の亢進や金属音が聴取されますが、麻痺性イレウスでは腸雑音の減弱します。腸閉塞・イレウスが疑われる場合、血液検査を行って炎症所見や脱水の有無を確認します。腹部X線検査では特徴的な腸管の拡張やニボーと呼ばれる腸管内にガスと液体がたまり、その境がX線に画然とした鏡面像として水平に映し出されたものが見られます。さらに、より正確に診断するため造影CT検査を行います。造影CT検査では閉塞部位や閉塞の程度、血行障害の有無などを評価することが出来ます。アレルギーや腎機能障害をお持ちの方で造影剤を使った検査ができない場合には単純CT検査が行われます。

腸閉塞・イレウスの症状

腸閉塞では、通過障害が生じた腸より、腸管内容物が流れ出ていかないために腹部膨満、腹痛や嘔吐を生じます。初期は胃液のような薄い液体を吐くことが多いですが、長引くと胆汁混じりの緑色の吐物や茶色い便臭のする吐物を吐くことがあります。また嘔吐が長引くと脱水となり、尿量が減ったりふらつくなどといった脱水症状が現れることもあります。また排便や排ガスが見られなくなり、腸管内の圧力が高まることから、腹部膨満感、腹痛がみられます。絞扼性腸閉塞では血流障害を来していることから急激で持続する強い痛みが特徴です。機能性イレウスでは腹痛は軽度のことがほとんどです。

腸閉塞・イレウスの治療

血流障害が疑われない軽症の場合は、絶食、輸液、イレウス管の留置にて自然に解除する場合が多いため、まずは保存的治療を行います。しかしながら1週間以上経過する場合や、何度も繰り返す場合は手術の適応となります。イレウス管とは鼻から入れる経鼻イレウス管と肛門から入れる経肛門イレウス管があり、腸管腔に溜まった腸管内容を吸引し、腸管の減圧をするチューブのことです。

絞扼性腸閉塞は腸管の血流障害を来たし、腸が壊死→穿孔→腹膜炎→敗血症性ショックとなり死に至る可能性があるため緊急手術が必要となります。まず腸管の捻じれを解除し、色調や蠕動の回復を確認します。回復しなければ壊死した腸管は切除する必要があります。絞扼性腸閉塞は全イレウスの約1割を占めます。大腸癌により腸閉塞を来たしている場合は、肛門からアプローチし、内視鏡下に大腸ステントを入れ、閉塞・狭窄を解除、もしくは狭窄・閉塞の口側に人工肛門を造設してイレウスを解除し、全身状態の改善を待った上で、後日、大腸癌に対する手術を施行することがあります。

腸閉塞・イレウスの再発予防

腸閉塞・イレウス治療後の再発予防として、便秘の予防は大切であり、下剤や大建中湯などの漢方薬の内服にて腸管の蠕動を保ち便通を良くすることが重要です。また、キノコ、タケノコ、こんにゃく等の消化の悪いものはできるだけ避けた方が良いでしょう。食べ過ぎたり、よく噛まずに食べると消化管に負担がかかるため避けるように心掛けましょう。

<リファレンス>

急性腹症診療ガイドライン 2015
日本腹部救急医学会雑誌35(4) 413-416 2015
絞扼性イレウスの早期診断法.日消外会誌 2003;36:11-17
イレウス初期治療における腹部所見と一般臨床検査所見. 臨外55: 151-155, 2000

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