月経不順|疾患情報【おうち病院】

記事要約

月経不順とは、正常な月経周期よりも短くなったり長くなったりする状態を指します。月経不順の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

月経不順とは

月経不順とは、月経周期が25-38日以外であることを意味します。月経の初日から数えて次の月経の初日までの日数を月経周期と言いますが、正常な月経周期は日本では25‐38日とされています。

月経周期がそれ以外である場合は、月経周期異常=月経不順の状態にあると言えます。正常より短い場合は頻発月経、長い場合は希発月経、90日以上月経が来ない場合は無月経とそれぞれ呼ばれます。

月経不順の原因

月経が遅れる原因として一番初めに考える必要があるのは妊娠の有無です。

妊娠が否定的である場合は、排卵周期の異常が関与している可能性が高いと考えられます。

排卵周期異常の要因としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 過剰な体重の増減
  • 激しい運動
  • 精神的ストレス
  • 寝不足や体調不良など生活上の変化
  • 薬剤による副作用
  • PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)
  • 高プロラクチン血症
  • 甲状腺機能異常

このような事によるホルモンバランスの異常が関与している部分が多いです。

また初経からの数年間と閉経前の数年間(更年期)は生理的に排卵周期異常が起こる時期であり、その期間にも月経不順がみられることが多くあります。

月経不順の疫学的整理

正常月経周期が25-38日とされた根拠は、1962年に約1万6000周期分を解析したときの古いデータであり、今後の研究が期待されています。

近年では2020年1月に、国内の月経管理オンラインアプリ利用者の32万人、計600万周期が解析データが発表されました。それによると、月経周期に季節による変動はないこと、月経周期に居住地の影響はないことほとんどないことが示されています。また年代ごとによる月経周期には変化がみられ、月経周期の平均値は25歳ごろに最も長くなり、その後45歳にかけて3日間平均値が短くなるという傾向がみられました。

月経不順の診断

月経不順は、数周期にわたる周期異常がある場合に診断されます。

治療方法は原因によって異なるため、原因疾患の診断が重要となります。妊娠出産歴、手術歴、既往歴、妊娠の有無の確認や、身体・生活上の変化に関する詳細な問診に加え、超音波検査による子宮・卵巣の観察やホルモンの採血の結果などから総合的に判断されます。

月経不順の治療

月経不順の治療は、原因の種類やおかれているライフステージにより多岐にわたります。

<原因によって>

  • 身体・生活上の変化による場合
    寝不足や体調不良など生活上の変化による月経不順は、規則正しい健康的な生活を送ることを促す生活指導により、正常周期に戻る場合も多くあります。精神的ストレスによるものは、原因となっている事柄が生活から取り除かれることで改善する場合もありますが、精神科的な治療が必要とされる場合もあります。
    過剰な体重の増加の場合は、食生活の見直しや運動により健康的に減量することで、月経周期が戻ることも少なくありません。
    過剰な体重の減少や激しい運動などによる月経不順の場合は、まず食事の見直しや活動量の制限などを行うことが重要です。摂食障害や利用可能エネルギー不足がみられる際は、専門的な栄養指導やカウンセリングが必要な場合もあります。
    薬剤による副作用による場合は、その治療の継続を優先します。薬剤変更が可能な場合は行うこともありますが、治療が終了し月経不順が継続する場合はその際に治療を検討します。

  • ホルモン異常などの原疾患がある場合
    原疾患として高プロラクチン血症や甲状腺機能異常などが背景にある場合は、その治療をまず行います。婦人科で治療が可能な場合もあれば、甲状腺・内分泌内科等の専門機関での治療が必要な場合もあります。

<ライフステージによって>

  • 年齢による生理的な変化である場合
    初経からの数年間と閉経前の数年間は生理的に排卵周期異常が起こる時期であり、その期間にみられる月経不順は生理的変化と考えられます。その期間の月経不順は、一般的に経過観察となります。
  • 現在積極的な妊娠希望がない場合  
    個人のホルモン状態に合わせたホルモン療法を行います。PCOSなどでみられる慢性的な希発月経や第1度無月経(エストロゲン分泌が保たれているもの)の場合はプロゲスチン周期療法、第2度無月経(エストロゲン分泌が欠乏しているもの)の場合はエストロゲン・プロゲスチン療法を行います。また状況に応じて、漢方薬、経口避妊薬(OC)やレボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)が選択される場合もあります。
  • 妊娠希望がある場合
    すぐ妊活をおこなう希望がある場合は、排卵誘発を含めた不妊治療を行います。

月経不順の相談の目安

妊娠が否定的である場合、3か月以上月経が来なければ受診が勧められます。また月経が頻回で貧血症状があるとき、だらだらとした出血が続くとき、いつ月経がくるかわからず生活上不便を感じるとき、妊娠希望であるが排卵時期が判断しづらく困っているときなどは相談が必要な状態です。

実際の診療では、月経がいつ来るのかわからなくて不安である、月経か不正出血か判断がつかないという状態で産婦人科を受診される方が多いです。月経不順の場合、周期によって経血量が多かったり少なかったり、また出血日数が長かったり短かったりなど、ばらつきが出ることが一般的です。月経と不正出血の区別は非常に難しいです。排卵が起こったあとの本当の意味での月経(消退出血)とよび、排卵を伴わずに起こる出血は破綻出血と呼び区別されます。本人が月経だと思っている出血も、実際は破綻出血である場合も多くあります。またそれ以外にも子宮内膜ポリープや子宮体がんなど、ホルモンの変動と無関係な不正出血などもあります。見た目や量などからの判断は難しく、出血の経過や診察所見などから総合的に判断されます。

以上をまとめると、25-38日周期以外でくる出血、普段と量が大幅に異なる出血、1週間以内にまとまって起こらず毎月様々な時期にでたりとまったりする出血、少量だけど1週間以上の長期間続く出血などがある場合は相談が必要です。

<リファレンス>

(1)産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020

(2)  NHS : Irregular Periods

(3) 国立成育医療センター/株式会社エムティーアイ プレスリリース