混合性結合組織病|疾患情報【おうち病院】

記事要約

混合性結合組織病とは、膠原病の一つで全身性エリテマトーデス・強皮症・多発性筋炎/皮膚筋炎の3つの膠原病のうち、2つ以上の症状が混在し、さらに血液検査で抗U1-RNP抗体という自己抗体が高値陽性となる病気です。混合性結合組織病の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

混合性結合組織病とは

MCTD は 1972 年 に提唱された膠原病の一つです。

その疾患概念は全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎の症状を部分的に持ちながら抗 U1RNP 抗体が高いという点を特徴とします。当初はその独立性を認めない意見もありましたが、1996 年には厚生省(現厚労省)によって改訂された診断基準が提唱され、また、肺高血圧症が本疾患に合併しやすく死亡原因として高い割合を占めるという独特の特徴から、独立した疾患として認知されています。

膠原病としてまとめられてる各疾患の中には、一つの疾患として当てはまらない症状を示すことがあります。すなわち2つの疾患が重複している、ある疾患から別の疾患に移行した、さらに、膠原病としての分類基準に一致しないがいくつかの病気の症状を示す場合があるのです。 膠原病の重複・移行例は古くから知られており、膠原病の重複症候群あるいは単にオーバーラップ症候群と呼ばれてきました。

混合性結合組織病は広い意味で、重複症候群の中の一つの病型であり、各疾患でみられるさまざまな症状が見られます。定型的なオーバーラップ症候群は、複数の疾患の基準を完全に重複して満足したり、各疾患にかなり特徴的な所見がみられるのに対し、混合性結合組織病では抗U1-RNP抗体が存在し、それぞれの疾患にみられる症状や所見が混在しつつ、各疾患の診断基準を満たすには至らないと言った傾向がみられます。そのため独自の診断基準があります。

本疾患は上記のように免疫異常を呈してはいるものの、その病態については不明な点が多く、たとえば本疾患に特徴的な抗 U1RNP 抗体がどのような病原性を持つのか、高い死因を占める肺高血圧症の本態は何かなど未だ解明すべき点が多い疾患です。 

混合性結合組織病の原因

他の膠原病と同様に病院は不明です。抗U1-RNP抗体は、当初、抗RNP抗体と呼ばれていましたが、自己抗体が何らかの関与をしているとしか言えません。

疫学的整理

病気が認知されてきたこともあり、本疾患の特定疾患申請者数は1988 年度 4,602 名で、2008 年度は 9,016 名と増加しています。また年間には、300 名以上の新患 者の発生があるものと推定されています。 女/男比は 16.2/1(1984 年調査)および 13.4/1(1992 年)と、女性が圧倒的に多くみられます。年齢分布は 40 歳代がもっとも高頻度で、平均年齢は45歳である。また推定発症年齢はこれより 10 年若く平均 36 歳で、30 歳代の発症の頻度がもっとも高いとされます。妊娠可能年齢の女性の発症が多いことからエストロゲンとの関連も疑われますがが否定的な報告もあります。

混合性結合組織病の症状および診断基準

診断基準を示します。共通所見として、レイノー症状、手指腫脹、肺高血圧があり、各膠原病に特徴的な症状が重複してみられます。

《 混合性結合組織病診断基準(2004 年度再改訂版) 》


 混合性結合組織病の概念: 全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎などにみられる症状や所見が混在し、 血清中に抗 U1-RNP 抗体がみられる疾患である 


I.共通所見

  1.レイノー現象 
  2.指ないし手背の腫脹 
  3.肺高血圧症 

Ⅱ.免疫学的所見

  抗 U1-RNP 抗体陽性 

Ⅲ.混合所見

  A.全身性エリテマトーデス様所見

    1.多発関節炎 
    2.リンパ節腫脹
    3.顔面紅斑 
    4.心膜炎または胸膜炎
    5.白血球減尐(4,000/μ l 以下)または血小板減少(100,000/μ l 以下) 

  B.強皮症様所見

     1.手指に限局した皮膚硬化 
     2.肺線維症、肺拘束性換気障害(%VC=80%以下)または肺拡散能低下(%DLCO=70%以下) 
     3.食道蠕動低下または拡張 

  C.多発性筋炎様所見

             1.筋力低下
     2.筋原性酵素(クレアチンキナーゼ)上昇 
     3.筋電図における筋原性異常所見 


診断: 1.Ⅰの 1 所見以上が陽性 
      2.Ⅱの所見が陽性 
          3.Ⅲの A、B、C 項のうち、2 項目以上につき、それぞれ 1 所見以上が陽性以上の 3 項目を満たす 場合を混合性結合組織病と診断する 

付記: 省略


また、各症状の陽性頻度は以下の通りです。

《MCTD の診断の手引き項目の陽性頻度(1994)》


共通所見

  レイノー現象     99.7(%)

  指・手背腫脹     79.9 

SLE 様所見

     多発関節炎       74.4 

     リンパ節腫脹    31.6 

     顔面紅斑          22.7 

     心膜炎              5.7 

     胸膜炎              6.4 

     白血球減少   51.8 

     血小板減少   6.4 

強皮症様所見

   手指硬化          63.1 

     肺線維症          34.0 

     肺拘束障害       32.5 

     肺拡散障害       48.6 

     食道蠕動低下    26.3 

多発性筋炎様所見

    筋力低下          41.5 

    筋酵素上昇       46.3 

    筋電図異常   43.6 

その他の合併症

これらの症状に比べて頻度は低いものの、肺高血圧症は混合性結合組織病に比較的頻度が高く(約5%)、予後に関わる重要な症状です。肺高血圧症は他の膠原病でも合併しますが、本症に合併することが一番多いという報告もあります。

肺高血圧症の初期症状としては、労作時の息切れがありますが、無症状でも早期の発見が重要です。心エコーなどの検査を定期的に行うことも必要です。

そのほかに無菌性髄膜炎が約10%、慢性甲状腺炎も10%程度みられるとされます。シェーグレン症候群の合併も25%と高頻度にみられます。乾燥症状などには注意が必要です。

混合性結合組織病の治療法と予後

レイノー症状などの末梢循環障害に対しては末梢循環障害改善薬や抗血小板薬の内服を行います。関節症状に対しては消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬、改善がみられなければ少量の副腎皮質ステロイドを使うこともあります。筋炎に対しても症状の程度に応じた量の副腎皮質ステロイドを使用します。

MCTD が提唱された当初は、副腎皮質ステロイド薬への反応性がよく、全身性エリテマトーデスと比較しても生命予後のよい疾患とされていました。しかし、予後不良例も存在し、死因は肺高血圧症が最も多いとされます。早期診断、早期治療が重要です。

<リファレンス>

MCTD(混合性結合組織病)診療ガイドライン2021

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