骨髄異形成症候群|疾患情報【おうち病院】

記事要約

骨髄異形成症候群とは、骨髄内で異常な造血幹細胞が腫瘍性に増殖し、正常な血液細胞の成熟を抑制する疾患です。骨髄異形成症候群の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

骨髄異形成症候群とは

骨の中心にある骨髄では、全ての血球の元となる造血幹細胞が赤血球、白血球、血小板の3種類の血液細胞へと成熟して、骨髄から血管内の血液中に出ていきます。

骨髄異形成症候群とは、骨髄内で異常な造血幹細胞が腫瘍性に増殖し、正常な血液細胞の成熟を抑制します。一部進行例では、急性骨髄性白血病に移行することがあるため前白血病状態と呼ばれます。

英語でMyelodysplastic Syndromesといい、MDSという略語で表されます。 

骨髄異形成症候群の原因

ほとんどの場合、原因は不明でが、何らかの原因によって血液をつくる細胞に遺伝子の異常が生じ、これが発症に関与すると考えられています。

骨髄の細胞の染色体を調べると、約50%に染色体異常がみられますが、先天的なものではなく、人に遺伝したり感染したりすることはありません。ただし、骨髄異形成症候群の中には、過去に他のがんに対して細胞障害性抗がん剤の治療や放射線治療を受けた数年後に、治療の副作用として発症する「治療関連骨髄異形成症候群」と呼ばれるものがあります。

骨髄異形成症候群の相談目安

血液検査で赤血球、白血球、血小板のうちいずれか、もしくは複数の項目で減少が認められたとき。

体がだるい、息切れ、動悸、風邪をひきやすい、あざができやすい、鼻血、歯ぐきから出血しやすいなどの症状を認めたときが受診の目安となります。 

骨髄異形成症候群の疫学的整理

骨髄異形成症候群の有病率は10万人あたり約3人、男女比はおよそ2:1とされています。

あらゆる年齢層に認められますが、50歳以上の人で多くみられ、特に65歳以上に多い疾患とされています。高齢化の影響もあり、発症数は増加傾向にあるといわれています。 

骨髄異形成症候群の分類

骨髄異形成症候群は、骨髄と末梢血中の芽球の割合などによりいくつかの病型に分類されます。

芽球の割合が多ければ多いほど、病状は進んでいると判断されます。なお、芽球の割合が20%以上になった時点で、MDSではなく急性骨髄性白血病に移行したと診断します。骨髄異形成症候群は白血病とは全く異なる病気ではなく、両者は密接な関係があります。また骨髄異形成症候群は単一の病気ではなく、様々な種類があり、進行の速度や特徴に違いがあります。

WHO分類(2008年版)

FAB分類(2008年版)

骨髄異形成症候群の症状

骨髄異形成症候群では減少する血球の種類により、下記のような症状が出ることがあります。

  • 赤血球減少(貧血症状):体がだるい、息切れ、動悸など
  • 白血球減少(易感染性):発熱、風邪をひきやすいなど 
  • 血小板減少(出血傾向):あざができやすい、鼻血、歯ぐきから出血しやすいなど

症状の出方には個人差があり、また病気の初期には無症状の方も少なくありません。多くの方は無症状期に健康診断や他の病気の検査中に偶然発見されます。

骨髄異形成症候群の予後と予後予測

骨髄異形成症候群は、白血病の前段階の一種で、数カ月から数年にわたって緩やかに進行する可能性があると考えられています。

10~30%の患者では、骨髄異形成症候群から急性骨髄性白血病に移行します。急性骨髄性白血病への移行リスクについて、予後因子を点数化し、その合計点数によってリスクを分類し、予後を予測をすることができます。代表的な予後予測システムには、IPSSとIPSS-Rがあり、今後の治療方針を決定するための非常に大切な情報となります。

IPSS(International Prognostic Scoring System : 国際予後予測スコアリングシステム)


 

IPSS-R(Revised International Prognostic Scoring System:改訂IPSS)

骨髄異形成症候群の診断方法

骨髄異形成症候群の診断をするには、血液検査で白血球・赤血球・血小板のうちいずれかもしくは複数の低下や網赤血球やビリルビン、LDHなどのさらに顕微鏡検査で白血球の中身(好中球、リンパ球などの割合)や細胞の形を調べます。

また骨髄検査も行い、顕微鏡検査による異常細胞の有無と芽球の割合などを調べます。造血幹細胞が正常に分化できず、血管内に放出される前に骨髄で破壊される無効造血や造られた血液細胞の形が異常になる異形成の所見より診断に至ります。さらに、染色体検査、遺伝子検査などの結果を総合して診断を確定します。

骨髄異形成症候群の治療

5q-症候群(5番目の染色体の一部欠失)という病型の患者さんは多発性骨髄腫の治療薬であるレナリドミドという薬剤による治療を考慮します。それ以外の病型では、前述のIPSSもしくはIPSS-Rを用いて、患者さんが比較的予後が良好な低リスク群、予後が不良と推定される高リスク群のいずれに該当するかを判定します。

低リスク群の場合、血球減少に対する輸血療法、G-CSF製剤投与や、輸血後の鉄過剰症に対するキレート療法などの支持療法はリスク群に関わらず、必要に応じて実施します。高リスク群の場合、年齢などの条件を満たしている患者さんに対して、根治が期待できる同種造血細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)の実施を考慮します。

またアザシチジンという抗がん剤は、骨髄異形成症候群の患者さんにおいて、白血病化の抑制や生存期間の延長、QOLの改善などの効果が期待されており、低リスク群で支持治療を行っても病状が進行する場合や高リスク群で移植を行わない場合に投与されます。

骨髄異形成症候群の生活上の注意点

貧血症状が強い場合

運動能力が低下し、軽い動作で息切れなどが出やすくなるだけではなく、転倒のリスクも上昇するので転ばないように注意が必要です。

白血球減少がある場合

白血球減少により起こりやすくなる感染は、細菌、真菌によるものです。感染予防のため人混みを避け、マスク着用の徹底しましょう。外出後のうがいと手洗い、口腔ケアも重要です。出血しやすい場合は、柔らかいハブラシや綿棒などを用いて口腔ケアをしてください。清潔を保つためにシャワーを浴びるのは良いこととされています。また、動物との過度な接触(キスなど)、土やほこりを吸い込む危険がある行為(土いじりなど)は避けた方が無難です。

血小板減少がある場合

転倒すると、出血を起こしやすいので、頭部打撲等の怪我をしないよう特に注意が必要です。
血小板減少による出血症状は、重度の場合、皮膚の出血症状が広範になったり、口腔粘膜の強い出血症状や下血が出現したりして、血小板輸血などの対処が必要となることがあります。また、心筋梗塞の既往などで抗凝固剤を服用している患者さんは、血小板が2万~5万/μLを下回った場合は、抗凝固剤を中止した方が良いとされています。出血を伴う抜歯などの歯科治療や外科的な治療を受ける場合にも、治療前に必ず主治医の先生に相談してください。

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