くる病 (子どものO脚)|疾患情報【おうち病院】
記事要約
くる病とは、ビタミンD不足による体内ミネラル(カルシウムやリンなど)のバランス異常によって起こる病気です。くる病の原因・症状、治療方法・改善対策を解説。
くる病とは
ビタミンD不足による体内ミネラル(カルシウムやリンなど)のバランス異常によって起こる病気です。成長軟骨が障害され、多くの症例でO脚変形を認めます。O脚以外にX脚変形や成長障害、関節の腫脹、筋力低下などを認めることもあります。
※成人(成長軟骨閉鎖後)に生じる同様の病態は骨軟化症と呼びます。
原因
おおまかに分類すると、ビタミンD欠乏による低カルシウム血症によるものと腎臓でのリンの排出が増加し低リン血症になることによるものがあります。
【ビタミンD欠乏によるもの】
ビタミンD欠乏性くる病
ビタミンDの摂取量の不足や日光照射不足による。
くる病の原因の多くはこれに当たります。
ビタミンD依存性くる病1型、2型(指定難病239)
遺伝性に天然のビタミンDを活性化できないことによる。ビタミンD活性化酵素の異常による1型とビタミンD受容体の異常による2型があり、遺伝形式は一般的に常染色体劣性遺伝をとる。
【低リン血症によるもの】
ビタミンD抵抗性くる病(低リン血症性くる病)(指定難病238)
腎尿細管でのリンの再吸収が抑制されることにより、血中のリン濃度が低下し骨年骨の成長に影響する。遺伝性を示す場合や腫瘍、薬剤による後天性の場合がある。
相談の目安
O脚に関する相談の目安としては、保護者が気になった場合はいつでも診療時間内に受診し(小児科、整形外科)、保護者の不安を取り除けば良いでしょう。臨床の現場では、1歳半健診でO脚を指摘され受診するケースが多くみられます。
疫学的整理
ビタミンD欠乏性くる病:
全国調査によって本邦の15歳未満の小児人口10万人あたりのビタミンD欠乏症の年間推定発症率は1.13人と推定されています。
ビタミンD依存性くる病:
文献的検討では、世界で1型、2型それぞれ100例程度と考えられています。
ビタミンD抵抗性くる病:
厚生労働省ホルモン受容機構異常に関する研究班の全国調査から、本邦での年間発症症例数117例(95% CI 75-160)と推定されています。
症状(潜伏期間・感染経路等)
くる病所見:
O 脚・X 脚などの下肢変形、跛行、脊柱の弯曲、頭蓋癆、大泉門の開離、肋骨念珠(皮膚上に見られる数珠状の肋骨の肥大)、横隔膜付着部肋骨の陥凹、関節腫脹、病的骨折、成長障害などを認めます。また、長期間放置されると筋力の低下、関節痛なども生じます。
上記くる病所見の他、ビタミンD依存性くる病では、生後数ヶ月以内に低カルシウム血症による痙攣を発症します。
診断の方法
単純X線(撮影部位は手関節、膝関節が推奨されている)でのくる病変化※の有無
血液検査(ビタミンD値、カルシウム値、リン値など)
※骨幹端の杯状陥凹、骨端線の拡大、不整、毛羽立ちなどのうち少なくとも1つを認める
治療方法と予後
ビタミンD欠乏性くる病:
ビタミンDの摂取により改善します。
具体的には、ビタミンDを多く含む食生活、外遊び(日光照射頻度の増加)、場合によってビタミンDサプリメントの摂取により血中ビタミンD値を改善します。
ビタミンD依存性くる病:
1型では活性型ビタミンDの投与が有効です。
2型では活性型ビタミンDの大量投与が必要です。治療の継続が必要で骨変形、低身長などが持続する場合があります。
ビタミンD抵抗性くる病:
リン製剤、活性型ビタミンDの投与による対症療法。多くは治療に抵抗し、骨変形、低身長が持続します。
最近のトピックス
近年、ビタミンD欠乏性くる病が増加傾向にあると言われています。上記の通り、ビタミンDの摂取不足、日光照射不足が原因です。ビタミンDは食事から摂取する以外に、日光に当たることにより皮膚でも産生される栄養素です。そのため過剰な日焼け止めの塗布、外遊び頻度の低下はビタミンD産生量を減らし、血中ビタミンD値の低下に繋がります。したがって子どもの骨の健やかな成長には、日焼け止めの適切な使用、冬期も含め十分な外遊びが大切です。
またビタミンDを比較的多く含む食品には、魚類(サケ、イワシ、しらすなど)、キノコ類(椎茸、キクラゲ)が挙げられます。
<リファレンス>
厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業) 総括研究報告書 小児ビタミン D 欠乏症の実態把握と発症率の推定に関する研究
日本小児内分泌学会 くる病・骨軟化症診断マニュアル
日本小児内分泌学会 ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き