敗血症|疾患情報【おうち病院】

記事要約

敗血症は、感染症に対する制御不能な宿主の調節不能な免疫反応によって引き起こされた致死的な臓器障害をいいます。

敗血症とは

感染症に対する制御不能な宿主の調節不能な免疫反応によって引き起こされた致死的な臓器障害をいいます。敗血症に急性循環不全を伴い、細胞障害、および代謝異常が重度となる状態を敗血症性ショックといいます。敗血症は容易に重症化するため死亡率が高いですが、早期に気づき、早期に治療が開始できると救命できる可能性が高くなる疾患です。

敗血症の原因

敗血症は何らかの細菌やウイルスに感染する感染症によって引き起こされます。原因となる主な細菌は、ブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌などとされており、多くは肺炎、尿路感染症、皮膚や腸管の感染症などから発生します。その他に、膵臓、心臓、髄膜、カテーテルに関連する感染症も原因となります。

感染症を発症すると体内では原因となった細菌が増殖して、その細菌の毒素によって体内の炎症を引き起こすサイトカインと呼ばれる物質が放出されます。サイトカインには炎症を引き起こすだけなく血管を広げて血圧を低下させる作用、細い血管の血液を固める作用があるため、血流が不足する臓器はさらなるダメージを受けて機能が低下していくのも敗血症の特徴です。

敗血症の疫学的整理

 2010年から2017年までの8年間、約5000万人の成人入院患者うち約 200 万人(約 4%)の患者が敗血症を発症し、約 36 万人が敗血症によって死亡しました。敗血症患者の年齢の中央値は 76 歳でした。感染源としては、呼吸器感染症が最多です(約 41%)。入院期間の中央値は約 30 日で、院内死亡率は約 20%でした。1)

敗血症の症状

悪寒とふるえ、発熱、身体の疼痛や不快感、冷たく湿潤した皮膚、意識低下(混乱や見当識障害)息切れ、頻呼吸、頻脈などの症状が挙げられます。

咳・痰、呼吸困難感、下痢・嘔吐、頭痛、といった原因となる感染症に特有の症状をはじめ、異常な体温上昇・低下、悪寒、ふるえ、冷たく湿潤した皮膚、ふるえ、手足の冷え、頻脈、頻呼吸、意識低下(混乱や見当識障害)などの症状が挙げられます。また敗血症が進行すると、血圧の低下や尿量の減少、呼吸困難などの重篤な症状が見られるようになります。

敗血症の定義と診断

<敗血症の定義>

敗血症が最初に定義されたのは1991年で、この時にSystemic Inflammatory Response Syndrome (SIRS)という概念が提唱され、敗血症は感染症によって引き起こされたSIRSであると定義されました2)。SIRSでは4つの項目(体温、呼吸数、心拍数、白血球数)が提案され、この2項目以上を満たすとSIRSと診断されました。現実的には、敗血症ではSIRSの4項目以外の症状・所見も呈しうるため、2001年に定義の改訂版が発表された3)。同時に重症敗血症という概念が導入され、これは敗血症によって臓器障害を呈する状態とされました。

<SIRSの定義>(米国胸部疾患学会、Critical Care Medicine 学会、1992)

  1. 体温 <36℃または>38℃
  2. 脈拍数 90回/min以上
  3. 呼吸数 20回以上またはPaCO2<32torr
  4. 白血球数 12000/min3以上または4000/mm3以下または10%以上のImmature

2つ以上を満たすとき、SRISと診断する。

2016年、敗血症の定義が改訂され、敗血症は、感染に対して宿主生体反応の統御不全により臓器機能不全を呈している状態(従来の定義の重症敗血症に相当)であり、敗血症性ショックは、敗血症のうち、循環不全と細胞機能や代謝の異常により、死亡率が高くなった状態であると定義されました。3)

quickSOFA(qSOFA;呼吸数≧22回/分、意識レベルの低下、収縮期血圧≦100mmHgという簡便な指標を用い、救急外来を受診した患者さんや一般病棟に入院している患者さんで、何らかの感染症を疑われた上で、qSOFAの3項目中、2項目を満たすと、敗血症の可能性が高いと判断されます。感染症(疑いを含む)+qSOFA2項目以上陽性、もしくはqSOFAの2項目を満たさなくても敗血症を疑う場合は、SOFAスコアの採点に進み、2点以上であれば敗血症と診断されます。4)

敗血症の治療

抗菌薬の早期投与、感染源のコントロール、必要に応じて、輸液や昇圧剤の投与、輸血、人工呼吸管理、鎮痛・鎮静・せん妄管理、血液浄化療法、栄養管理、血糖管理、体温管理、DIC対策、静脈血栓塞栓症予防・対策、集中治療後症候群対策などを行っていきます。

敗血症の予防と相談の目安

敗血症を予防するには感染症を予防することが大切です。そのためにも、日頃から手洗いや手指消毒、マスク着用などの基本的な感染対策をしっかり行いましょう。また万が一感染症にかかったとしても悪化させないよう注意することで発症のリスクを下げることができます。感染症が疑われる症状がある場合、可能な限り早期に医療機関を受診して、適切な検査・治療を受けることが大切です。

<リファレンス>

1)Trends in the incidence and outcome of sepsis using data from a Japanese

nationwide medical claims database ーthe Japan Sepsis Alliance (JaSA) study groupーCritical Care 25, Article number: 338 (2021)

2)America College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference. Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis. Crit Care Med 1992; 20:864-74.

3)Levy MM, Fink MP, Marshall JC, et al. 2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference. Crit Care Med 2001; 31:1250-06.

4)Singer M, Deutchman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock. JAMA 2016; 315:801-10.

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