単純性股関節炎|疾患情報【おうち病院】

記事要約

単純性股関節炎とは、2~10歳 (5歳前後が多い) の小児において、何らかの原因で股関節に炎症が生じ、関節液が過度にたまる病気です。単純性股関節炎の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

単純性股関節炎とは

幼児期から学童期前半くらいの年齢の子どもに見られることがある股関節の炎症性疾患です。男の子に多く見られます。朝起きると足が痛くて歩きづらい、歩けないといった急に起こる症状が特徴です。

単純性股関節炎の原因

はっきりした原因は不明です。しかし発症の1、2週間前に風邪症状を認める症例が多くあることからウィルス感染が関係している可能性が指摘されています。また、遠足や運動会など活動量が多かった後に認めることもあります。

相談の目安

突然、子どもが足を痛がり歩きたがらなくなるという症状なので保護者は慌ててしまうことがあります。骨折を疑うような明らかな外傷、発熱や患部の腫れ・熱感などがなければ通常の外来時間に整形外科を受診すればよいと考えます。もちろん、判断に迷う場合やどうしても心配な場合は時間外の救急外来を受診してもよいでしょう。

単純性股関節炎の症状

下肢痛

朝起きると「足が痛い」と訴えることが多いです。そして子どもが痛いという部分は股関節とは限りません。膝が痛い、スネが痛いなど股関節とは違う部分の痛みを訴えることがよくあります。

股関節の可動域制限

よく観察すると股関節の動きに制限が見られます。しっかり曲げたり、広げたりすることが痛みのため困難になります。このため洋服の着脱、おむつの交換などを嫌がることがあります。

歩様異常

足の痛みや違和感を感じているので通常通り体重をかけて歩くことができません。足を引きずったり、患側は床に足を接地する時間が短くなるような歩き方(逃避性歩行)が見られます。

歩行困難

全く歩けない、歩きたがらない子どももいます。炎症の程度によって歩ける子から歩けない子まで様々です。

その他、まれに微熱を認めることがあります。

単純性股関節炎の診断方法

超音波検査

股関節に関節水腫※を認めることで診断が確定します。

また高性能な超音波機器では、関節水腫の内容物の性状を推測することができます(例 関節液、血液、膿の鑑別)。

※関節水腫とは、関節内にいわゆる”水”が溜まっている状態のことです。この”水”は正確には関節液といいます。正常な状態でも関節内には関節液が存在し、関節の潤滑な動きに関与しています。炎症によって通常量以上の関節液が貯留した状態が関節水腫です。

レントゲン検査

骨折やその他の疾患との鑑別目的に行います。通常、単純性股関節炎では骨に変化は認めません。関節水腫が著名な症例では、レントゲンの軟部陰影(骨以外の脂肪や関節周囲組織)によって関節水腫の存在が推測できます。

鑑別疾患

  • ペルテス病
  • 化膿性股関節炎
  • 骨折などの外傷

単純性股関節炎の治療法

安静にすることが一番の治療になります。約1週間ほどで症状は自然に改善します。

年齢的に安静にするのが難しいという問題はありますが、飛んだり跳ねたり、走ったりといったことを制止するだけでも十分効果はあると考えます。また痛みが治るまでは通園、通学は控えてください。

痛みが強い場合は痛み止め(アセトアミノフェン)を使用することもあります。

<リファレンス>

Tachdjian's Pediatric Orthopaedics

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