多くの人が悩まされる花粉症の“救世主”!『舌下免疫療法』【医師にインタビュー】

記事要約

今や、国民病ともいわれる『花粉症』。ご自身は違っても、ご家族が・お友達が・同僚が花粉症という方は多いのではないでしょうか。今日はそんな花粉症の辛さを軽減する治療法『舌下免疫療法』についてお伝えしていきます。

花粉症とは…

さて、言わずもがなの花粉症ですが、今一度どんな病気かおさらいしましょう。

花粉症とは、主に春の花粉と呼ばれるスギやヒノキの花粉、秋の花粉と言われるヨモギやブタクサの花粉に対し、過剰に身体が反応して目の充血や痒み、鼻水・鼻づまりといった症状を引き起こすことをいいます。罹患者のうち最も数が多いのはスギ花粉の花粉症と言われています。近年は、低年齢化が進み、小学生の低学年や幼稚園児でも発症することが増えてきています。花粉症の原因はハッキリ解っていませんが、昔に比べ生活そのものが衛生的になり、免疫細胞が花粉に過剰に反応することが原因ともいわれています。また、遺伝は解明されてませんが、両親が花粉症の場合子供も花粉症という例は多くあるのも事実です。

治療にはどんなものがある?

花粉症の治療法は、現在「服薬」「点鼻薬」「点眼薬」「鼻の手術」等が主に用いられます。

これらは対症療法といって症状を抑えるための治療です。一方で症状を抑えるのではなく病気を元から治療していく根治療法の1つが、本日ご案内する『舌下免疫療法』です。対症療法は、毎年症状がでる度に投薬が必要になりますが、根治療法は文字通り“根治”なのでアレルギー症状を元から治療していくため、長い目でみた時とても有効的な治療といえます。 

舌下免疫療法とは

では、舌下免疫療法について詳しくお話していきます。舌下免疫療法はアレルゲン免疫療法の一種で、身体の中にアレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ吸収させていくことで、アレルギーへの過剰な反応を弱めていく治療法です。現在はスギ花粉症、またはダニによるアレルギー性鼻炎と診断された方への治療法として薦められており、数年前に保険適用になったことで、より受けやすくなりました。

先ほど、長い目で見ればと書きましたが、この治療は3年~5年という期間を要するため、長い期間付き合っていくという覚悟が必要ではありますが、痛みもなく、手軽で重大な副作用が少ないことは、大きな利点と言えます。また、現在は約8割の方に効果があると言われていて、花粉症根治の大きな役割を担っています。服用方法は比較的簡易です。初診時は、アナフィラキシーショックなどの確認のため、医師の対面で服用し(舌下に乗せる)、30分程様子を見ますが、それ以降は、自宅で毎日舌下に乗せて1分間置いておくという方法です。通院も月1回のため、負担が少なく済みます。今後はこの継続治療もオンラインで可能になっていくかもしれません。そうなると、より手軽に治療が受けられるようになることも期待できます。

治療を受けられる人は?治療開始の時期・服用の注意点は?​​​​​​

舌下免疫療法は、比較的広い層で治療が可能ではありますが、以下の方は服用できないといれています。

  • がんや自己免疫疾患に罹患してる患者の方
  • 妊娠している方(既に舌下免疫療法を開始している過程での妊娠の場合は可能)
  • 授乳中の方(授乳に関するエビデンスが確認できないため、この期間は薬停止を推奨)
  • 重い心臓病の方
  • 重い喘息の方
  • 5歳未満の方

5歳以上は、服用可能となってはいますが、個人差があります。この治療法は、薬を舌下に乗せて1分間そのままの状態を保ちます。飲み込んでしまったり吐き出してしまったりしないことが重要なので、お子さんはその理解が出来ているかどうかで服用の可否を判断することになります。毎年花粉症に悩まされ、その時期憂鬱になる方々に広くお奨めしたいですが、特に推奨するのは、受験生のお子さんです。受験の時期はスギ花粉が多く飛ぶ時期と重なるので、集中力低下を防ぐためにも、この時期に少しずつでも効果が出るよう、早めに開始することをお奨めしています。

この療法は、スギ花粉が飛散している時期は始められないため、6月辺り~12月辺りが開始時期となります。ただし、ダニによるアレルギー性鼻炎の治療については、時期に関係なく始めることが可能です。

服用に関しては、自宅で服用が可能なだけに、飲むタイミングが重要になります。服用のタイミングですが、以下の時は避けなければいけません。

  • 激しい運動や入浴、飲酒の前後2時間
  • 虫歯や口腔内に傷が出来ている時、歯が抜けたあと
  • 風邪など体調不良の時
  • 喘息の発作が起きている時

これは、激しい運動等でアナフィラキシーショックを引き起こすリスクを少なくするためや、口腔内の傷から血中に薬が入り、副作用が起こるリスクを減らすためです。お子さんの場合、クラブ活動等で運動することや、歯が抜け変わる時期などによって注意すべきタイミングがありますので、お子さんの様子を見ながら、ライフスタイルに合わせたタイミングを掴むようにしてください。あまり神経質にならずに、口内炎が出来た時や、お子さんが修学旅行等のタイミングは、2~3日投薬をスキップをしても問題はありません。 

実は処方できる医師は限られている!

効果の高さや比較的気軽な服用方法を知り、開始しよう!と思う方もいらっしゃると思います。ですが、実はこの薬は思い立った時どこの病院でも処方して貰えるお薬ではないのです。この薬を提供している製薬会社は現在2社で、この企業が提供しているeラーニングを受講した医師だけが処方できることになっています。eラーニングでは副作用や、万一アナフィラキシーショックを起こした際の対応方法、薬の自己管理方法や服用方法を学び、患者さんが安心して服用できるための学びを受けた医師から処方して貰うことになります。処方できる医師は、耳鼻科・小児科・内科が多いですが、処方をしてもらおうと思った場合は、その病院が処方可能かどうか事前に確認しておくといいでしょう。

eラーニングを受講し、処方が出来る病院をまとめた表がこちらです。

◆スギ花粉でお悩みの方

◆ダニアレルギー性鼻炎でお悩みの方 

まとめ

国民病と言われる花粉症。今までは毎年飛散前に薬を飲んだり、点鼻薬を投与したりと我慢しながら、何とか軽減させようとしていた症状を、「根治」という考え方で治療していく舌下免疫療法。長期間毎日飲むことや、月一回の通院は確かに覚悟がいるものです。ですが、飲み忘れを防止するアプリが開発されるなど工夫もされ始めています。私たちanamneも、月1回の通院をオンラインで行えるようにするなど、より良い治療をオンラインで行える世の中を目指していきます。花粉症で悩む方が減って、健やかな日常になりますように。

おうち病院
おうち病院