緊張型頭痛|疾患情報【おうち病院】

記事要約

緊張型頭痛とは過度の緊張やストレスなどが関連しているとされる頭痛の総称で他の疾患を原因としない慢性頭痛の中で最も患者数が多く約80%を占める疾患です。緊張型頭痛の原因・治療方法・診断のコツなどを、医師監修の基解説します。

緊張型頭痛とは

過度の緊張やストレスなどが関連しているとされる頭痛の総称で他の疾患を原因としない慢性頭痛の中で最も患者数が多く約80%を占める疾患です。成人の有病率は約20%~40%と推計され、男女ともにみられますが女性に多い傾向にあります。主に後頭部を中心に頭の両側や首筋にかけて痛み、頭の周囲が締め付けられたり圧迫感があるような頭痛を起こします。症状が持続しすっきりとしないことが負担になりますが、片頭痛のように痛みが強い時には寝込んでしまうということはほとんどありません。

緊張型頭痛は頭痛の起こる頻度によって3種類に分けられ、稀発反復性緊張型頭痛、頻発反復性緊張型頭痛、慢性緊張型頭痛があります。反復性緊張型頭痛では1ヶ月の頭痛日数は14日以下ですが、慢性緊張型頭痛は1ヶ月に15日以上頭痛があります。 

緊張型頭痛の原因

長時間同じ姿勢でのデスクワーク・読書・勉学・パソコン・スマホ・ゲームや、車の運転など不自然な姿勢が持続することで首や肩、頭の表面の筋肉が収縮して硬くなり、血流が悪くなることで起こると考えられています。また前傾姿勢、うつむき姿勢、睡眠中の不自然な姿勢、枕の高さが合わない等が要因になっている場合も多いです。それらに加えて、ストレスや不安、緊張、プレッシャーなどの精神的な要因が神経や筋肉の緊張状態を引き起こすことになり筋肉に力が入り続けたり、脳の痛みを調整する機能がうまくはたらかなくなったりすることで起こる場合もあるとされています。このような理由から筋肉への血液の供給が減少したり筋肉が硬くなったりすると、筋肉や筋膜を支配している神経が過敏になります。これは脳の感覚の中枢に原因がある中枢性因子という言葉に対して、脳から神経が出た後の末梢の問題であり末梢性因子と表現されています。一方、末梢の筋肉や筋膜から三叉神経という神経を介して中枢の脳幹や大脳に伝わり感作されます。こちらは中枢性因子と呼ばれます。緊張型頭痛のメカニズムは末梢、中枢いずれの関与も考えられ、反復性緊張型頭痛では末梢性因子が主に関与し、慢性緊張型頭痛では三叉神経を介した末梢と中枢の両者が複雑に関与していると考えられています。

末梢性の痛み

筋肉などのこわばりにより痛みが生じます。末梢性の痛みの原因の中心は肩こりや首のこりです。悪い姿勢(前傾姿勢や同一姿勢)や眼精疲労、ストレスなどで肩や首の筋肉に過度の負荷がかかると、神経が刺激されて筋肉の緊張やこりが生じます。負荷がかかった肩や首の筋肉の中で血流が悪くなることや痛みの物質がたまることによって痛みの悪循環を起こります。痛みが起こった筋肉はさらに緊張が増し、さらに悪化するという悪循環になります。

中枢性の痛み

痛みの感覚に過敏になることで痛みが生じます。中枢性の痛みの原因は疲れやストレス、睡眠不足、うつなどです。筋肉から脳に過剰に痛みの感覚が送られてくると脳の痛みを感じる感覚が過敏になり痛みが悪化します。ストレスや抑うつ気分があると痛みに対して敏感になりやすく、筋肉の緊張がなくても頭痛を感じ易くなります。慢性緊張型頭痛では中枢性の痛みのメカニズムの影響が大きいと考えられています。さらに頭痛自体がストレスとなり二次的にうつや不安が起こりやすくなり頭痛が悪化するという悪循環が起こります。

緊張型頭痛の症状

緊張型頭痛と並んで代表的な頭痛の一つである片頭痛はズキズキと脈打つような拍動性頭痛が特徴的であるのに対し、緊張型頭痛は非拍動性の頭痛が特徴で頭をベルトで締めつけられるような感じがして、前頭部または眼の周辺から始まり頭全体に広がります。肩や首のこりを伴うことが多く、ふわふわとしためまいや倦怠感を伴うことがあります。片頭痛と異なり、吐き気・嘔吐や前兆などはあまり生じません。頭痛の程度としては、多くの場合、軽度~中等度程度で重度の頭痛を訴えることは稀であり、頭痛が生じても仕事や家事、勉強などは行うことができます。頭痛の頻度も時々から毎日と個人差があります。

緊張型頭痛の検査と診断

緊張型頭痛を診断するために最も重要な検査は問診です。画像検査よりも頭痛の起こり方や持続期間、痛みの場所、どのような痛みかの方が診断には重要です。

基本的には問診により診断可能な疾患ですが、くも膜下出血や脳腫瘍、もやもや病等、その他の疾患を除外するため、頭部CT又はMRI検査を行うことが推奨されます。

稀発反復性緊張型頭痛の診断基準

  1. 平均して1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の頻度で発現
  2. 30分〜7日間持続する
  3. 以下の項目を少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
    2. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
  5. 他に最適な診断がない

頻発反復性緊張型頭痛の診断基準

  1. 頭痛発作が3ヶ月を超えて繰り返し、頭痛発作の頻度は平均して1ヶ月に1-14日(1年間に12日以上180日未満)
  2. 30分〜7日間持続する
  3. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 悪心や嘔吐はない
    2. 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
  5. 他に最適な診断がない

慢性緊張型頭痛の診断基準

  1. 3ヶ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現
  2. 数時間〜数日間持続、または絶え間なく持続する
  3. 以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目満たす
    1. 両側性
    2. 性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
    3. 強さは軽度〜中等度
    4. 歩行や階段昇降のような日常的な動作により増悪しない
  4. 以下の両方を満たす
    1. 光過敏、音過敏、軽度の悪心はあってもいずれか1つのみ
    2. 中等度〜重度の悪心や嘔吐はどちらもない
  5. 他に最適な診断がない

緊張型頭痛の治療

緊張型頭痛における頭痛の程度は多くが軽度~中等度であり、寝込んでしまうほど重くはならないことがほとんどです。稀発型や市販薬で改善するような場合は医療機関を受診することは少ないですが、頭痛の頻度が高くなると生活の質(QOL)が大きく低下してしまうため、頭痛の頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛は治療の対象となります。

1)鎮痛薬

緊張型頭痛治療には数多くの非ステロイ ド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)が用いられており各種NSAIDsの効果の差は少ないです。教科書的にはアセトアミノフェン:acetaminophenはNSAIDsに分類されておらず単に鎮痛薬(simpleanalgesics)とされています。この鎮痛薬やアスピリン:acetylsalicylicacid(アセチルサリチル酸)は世界中で医師の処方によらず自己投薬されていることが多いです。妊娠中の女性では安全性の面から通常アセトアミノフェンが選択されます。しかし、鎮痛薬を用いた治療は症状を一時的に抑えるだけであり、また長期的に服用することで薬物乱用頭痛(薬の使い過ぎによって生じる頭痛)を引き起こすことがあります。そのため、長期服用には注意を要し、週に2~3回以上の使用は控える必要があります。

2)トリガーポイント注射

トリガーポイント注射とは、痛みがある部分に局所麻酔薬を注入する治療で、痛みを取り除くと同時に筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ただし、長期的に行うものではなく、あくまでも短期的な治療となります。

3)予防治療

主に頓服治療で改善が乏しい場合に予防治療が検討されます。予防治療においても薬物療法が中心です。緊張型頭痛は精神的ストレスによって生じる場合もあることから、現在は抗うつ薬による内服治療がよく行われています。特に三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンの予防効果が高いとされています。また、不安が強い患者に対しては抗不安薬を用いるほか、首や肩の筋肉の緊張を緩和するために筋弛緩薬との併用療法が行われる場合もあります。

緊張型頭痛の予防・対処法

頸部・肩の筋緊張が関与していることが多いため、筋緊張が起こらないように、またはストレッチやマッサージでほぐすように心掛けることが大切です。

  1. 正しい姿勢(顎を引き背筋をまっすぐにする)を心掛ける
  2. デスクワークを1時間ほど行ったら5分間は休憩するなど、こまめに休憩をとって気分転換をはかり、背すじを伸ばすなどストレッチをして頸部・肩の筋肉をほぐすようにする
  3. 入浴の際には、シャワーでなく湯舟に浸かり、頸部・肩の筋肉のマッサージをして筋肉の張り・疲れをほぐす
  4. 自分に合った枕を使用し睡眠不足に気をつける
  5. 水泳やウォーキングなどの軽い運動を定期的に行う

<リファレンス>

慢性頭痛の診療ガイドライン
神経治療 36;233-237,2019
日本頭痛学全誌 31, 1-188, 2004
頭痛診療ハンドブック 中外医学社 2009 148-161
日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会 国際頭痛分類第3版

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