血栓性血小板減少性紫斑病|疾患情報【おうち病院】
記事要約
血栓性血小板減少性紫斑病は、血小板の数が減少し、また塊が血栓として血管を閉鎖することによって血管の支配領域に虚血性変化を引き起こし、種々の多彩な症状を示す疾患です。この記事では血栓性血小板減少性紫斑病の症状や治療などについて医師監修の基解説します。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)とは
止血に必要な血液中の血小板が不適切に活性化され、血小板が互いにくっつきあって小さい塊かたまりを形成します。そのことにより血小板の数が減少し、また塊が血栓として血管を閉鎖することによって血管の支配領域に虚血性変化を引き起こし種々の多彩な症状を示す疾患です。
血小板減少、赤血球の破壊による溶血性貧血、腎機能障害、発熱、精神神経症状の5徴候がみられる全身性の疾患です。この疾患は英語でthrombotic thrombocytopenic purpuraといい、その頭文字をとってTTPという略語であらわされることもあります。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の原因
血液中にはADAMTS13は別名フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor; vWF)切断酵素とも呼ばれる主として肝臓で産生される酵素があり、このADAMTS13活性が低下することで起こる疾患と考えられています。
vWFは互いの血小板をくっつける糊の作用があることが知られていますが、TTPでは、これを切断するADAMTS13の活性が低下もしくは欠損するために、非常に大きなvWF重合体が血液中に存在し、血管内で血小板血栓がどんどんできる状態となりTTPを発症します。
全身の毛細血管の内側は本来なら赤血球が通れるほどの大きさですが、血管内皮に血小板が張り付いて血栓を作ると、この血栓を構成するフィブリン糸が血管内腔にクモの巣状に張りめぐらされ、この間隙を赤血球が通過する際に、物理的に破棄され、溶血性貧血が起こると考えられます。
血漿 ADAMTS13活性が著しく減少する原因として、
- ADAMTS13活性の先天性欠損
- 後天性にADAMTS13に対する自己抗体の産生
- 重篤肝機能障害などによる産生低下などが知られています。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の疫学的整理
後天性TTPはTTP全体の95%を占めており、発症年令は乳幼児から老人までと幅広く、男女の発症率は、全体的にはほぼ1:1ですが、20~40歳では、1:2の比率で女性に多いという報告があります。
先天性TTPであるアップショー・シュールマン症候群(Upshaw-Schulman症候群:USS)は、生後間もなく新生児重症黄疸で発症する典型的な症例ですが、学童期に繰り返す血小板減少で診断される症例や、成人期以降に習慣性流産などの妊娠時に発症するタイプもあります。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の症状
皮膚に紫斑ができる、易疲労感、めまい、起立性低血圧、動悸、浮腫、尿の回数・量の変化、発熱、頭痛、抑うつ、けいれん、意識障害、運動麻痺などの症状があらわれます。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診断
ADAMTS13活性が10%未満に著しく減少していれば、TTPと診断されます。抗ADAMTS13自己活性中和抗体が陽性であれば、後天性TTPと診断されます。陰性であれば先天性TTPを疑い、ADAMTS13の遺伝子検査を検討します。
ADAMTS13活性に関わらず、5徴候のうち血小板減少と溶血性貧血を認める場合は、下記の除外すべき疾患などを鑑別して他の疾患が否定できれば、TTP疑い例とします。
≪5徴候の目安≫血小板減少は、血小板数が10万/ul未満の場合。 細血管障害性溶血性貧血は、赤血球の機械的破壊による貧血により、ヘモグロビンが12g/dl未満で、溶血所見が明らかなこと、かつ直接クームス試験陰性で判断します。溶血とは、破砕赤血球の出現、間接ビリルビン、LDH、網状赤血球の上昇、ハプトグロビンの著しい減少などを伴う所見を指します。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療
・先天性TTPの治療:新鮮凍結血漿を定期的に輸注してADAMTS13酵素補充を行い、血小板数を維持する治療が行われます。
・後天性TTPの治療:ADAMTS13インヒビター(自己抗体)によってADAMTS13活性が著しく減少しているので、新鮮凍結血漿のみの投与では不十分で、治療は血漿交換療法が第一選択となります。ステロイド、またはステロイドパルス療法の併用が一般的です。
・難治・反復例に対してはビンクリスチン、エンドキサンなどの免疫抑制剤の使用や脾摘なども考慮されます。*TTPの血小板減少に対して、血小板輸血を積極的に行うことは禁忌とされています。
血栓性血小板減少性紫斑病相談(TTP)の目安
皮膚に紫斑ができる、易疲労感、めまい、起立性低血圧、動悸、浮腫、尿の回数・量の変化、発熱、頭痛、抑うつ、けいれん、意識障害、運動麻痺などの症状がみられたとき血液内科や内科への受診を お勧めいたします。
<リファレンス>
難病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病(難病指定64)
小児慢性特定疾病情報センター 血栓性血小板減少性紫斑病