夏から秋へ、季節の変わり目に気を付けたい「頭痛」を医師が解説 【医師にインタビュー】
記事要約
長く暑かった夏が終わり秋がやってきます。秋は過ごしやすい季節ではありますが、台風や秋雨前線などによる雨が多く、また気温差も大きいため、体に負担がかかる時期でもあります。 今回は、季節の変わり目に気を付けたい頭痛やその予防法、対処法について寺田先生にお話をお聞きしました。
頭痛にはどんな種類があるの?
頭痛は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分けられます。
頭痛の多くを占めるのが「一次性頭痛」で、そのなかでも『片頭痛』と『緊張型頭痛』などに分けられます。
『片頭痛』は脳の血管が拡張し神経を刺激することで引き起こされます。こめかみのあたりが、ドクドクやズキンズキンと脈を打ったような痛みが起こるのが特徴です。頭痛と同時に吐き気を感じることや、音や光の刺激を不快に感じることもあります。
『緊張型頭痛』は、サイズの小さな帽子をかぶった時のように頭のまわりがギューッとしめつけられるような痛みが特徴です。頭、首、肩、背中などの筋肉が緊張することで起こる頭痛です。多くの人が悩まされているのがこの『緊張型頭痛』と言えます。
「一次性頭痛」は繰り返し起こることも多く、なかには症状が重い方もいますが、命にかかわりはありません。
一方で、何らかの病気が原因で起こる頭痛のことを「二次性頭痛」と言います。
原因は様々ですが、くも膜下出血や脳腫瘍など生命の危険もある病気に伴っておこります。それまでに経験したことのない強い頭痛、吐き気や嘔吐、手足のしびれ・動きづらさなどを伴う場合は、早めに医療機関を受診するようにしてください。
秋に起きやすい頭痛は「片頭痛」
季節の変わり目に起きやすい頭痛は片頭痛です。
秋は、台風が発生し日本列島付近を通過することや、秋雨前線の停滞により長雨が続くなど「気圧の変化」が大きい時期です。
私たちの体は気温や湿度など気象の変化に左右されていますが、気象の中でも特に影響を受けるのが「気圧の変化」です。そして、体のなかでも「気圧の変化」の影響を大きくうけるのが自律神経です。
自律神経とは、体温調節や内臓の動き、呼吸、血管の拡張や収縮などを無意識のうちに24時間コントロールしてくれます。
季節の変わり目は、「気圧の変化」が大きいため、順応しきれなくなり自律神経が乱れやすくなります。自律神経が乱れると脳の血管が拡張し、血管のまわりを取り囲んでいる三叉神経が引っ張られ、頭痛が起こります。
脳の血管の拡張によって頭痛がおこるのが片頭痛の特徴です。
体の中で気圧の変化を感じているのは、内耳(耳の奥の器官)です。内耳が気圧の変化に対して過剰に反応してしまうことが自律神経の乱れにつながります。男性に比べて女性の方が、内耳が敏感な傾向にあり、頭痛を訴える人のおよそ3分の2が女性です。また、年代では40代が一番多いとされています。
片頭痛の予防法は?
自分の頭痛のパターンを知る
天気によって頭痛が起こりやすい人は、その予兆を感じたことがある人が多いと思います。どのような気象条件の時に頭痛が起こるのか、自分のパターンが分かれば予兆を知ることができ、予防しやすくなります。
例えば台風の時に頭痛が起こる人は多いのですが、台風が近づく前に頭痛になる人もいれば、台風が通過中に頭痛になる人もいます。痛むタイミングは人それぞれです。ご自身のパターンがあるはずなので、それを把握することをおすすめします。
記録の付け方ですが、天気、気圧、体調、症状の強さ、睡眠時間、女性の場合は生理周期、ストレスの有無などを1か月ほど記録することをおすすめします。
本当に天気に影響されているのか、症状と天気の関連性が明確になり、もし天気に影響されているのであれば、どのタイミングで頭痛がおこりやすいのかパターンがみえてくると思います。
そのうえで、頭痛が起こる可能性が高い時には、普段以上にリラックスする生活を心掛けるようにしましょう。予防的に鎮痛剤を早めに服用してもよいと思います。
また、内耳のまわりの血行をよくすることも効果的です。耳のまわりの血行が悪くなると、内耳がむくんで気圧の変化に過敏になります。耳の後ろにあるツボ(完骨)に、ホットタオルを当てたり、軽くマッサージをしてみてください。
自律神経を整える
夏から秋の季節の変わり目はだれでも体調を崩しやすい季節です。自律神経が乱れないような規則正しい生活を送るようにしましょう。具体的には、下記のようなものが挙げられます。
- 朝起きたら太陽の光を浴びて体内時計を整える
- 毎日朝食を食べる
- 日中にウォーキングなどの適度な運動を心掛ける
- 起床と就寝の時間を一定にして質の良い睡眠をとる
- シャワーではなくお風呂に入る
- マグネシウムを含む海藻類や、大豆イソフラボンを摂取する
ポイントは、日中は活動的に動き、夜はリラックスをして過ごすというメリハリのある生活を送ることです。
片頭痛の対処法~温めるのは逆効果!冷やすことで症状が和らぐ~
片頭痛に限らず、頭痛が起きているときは、無理をせずに体を休めることが基本です。
痛みはじめには、コーヒーを1~2杯飲むことも効果があります。カフェインが作用し、血管を収縮する助けをしてくれます。
痛みが強い場合は、我慢せずに鎮痛剤を服用しましょう。市販のもので構いません。
片頭痛のときは外からの刺激を遮断することが重要です。暗くて静かな環境で安静に横になってください。
首や肩を温めると良さそうなイメージがありますが、片頭痛は脳の血管の拡張によって起きるため逆効果になります。痛みを感じるこめかみのあたりを冷却シートや氷枕などで冷やすと脳血管が収縮して痛みが緩和されます。患部を温める、マッサージや入浴、スポーツなどは血流をよくし痛みを強めるので行わないでください。
尚、片頭痛ではなく、緊張型頭痛の場合は、逆に「温める」ことや「体を動かす」ことで血流をよくすることが痛みの緩和に有効となります。
病院の探し方
頭痛が起こるのが月に数回程度で市販の鎮痛剤で落ち着くようであれば、頻度が増えたり痛みが悪化したりしない限りは無理をして病院へいく必要はないと考えられます。
一方で、生理ではない期間も日常的に鎮痛剤を飲んでいる方や、仕事を休んでしまうほど症状が重いなど日常生活に支障が出ている場合は、病院へ行くことをすすめします。
頭痛について詳しく診ることが出来るのは、神経内科や脳神経外科、ペインクリニックなどです。最近は頭痛の悩み専門の「頭痛外来」も全国的に増えているのでそちらも良いと思います。
医師へ自分の症状を詳しく伝えるために、1か月程度の記録があると助けになると思いますが、無くても大丈夫です。医師とのコミュニケーションでは『OPQRST』を意識して症状を伝えてください。
「OPQRST」とは、以下の頭文字を並べたものです。
- O(Onset)始まるタイミング/痛みはいつから?
- P(Palliative/Provocative) 誘因/何をしたらよくなるのか?悪化するのか?
- Q(Quality)質/どのような痛み方をするのか?カタカナで表現すると?
- R(Region) 場所/どこが痛むのか?右・左・両方?
- S(Severity/Symptoms)痛みの強さ、随伴症状/1~10段階でどの程度の痛みか?、他の症状はあるか?
- T(Time)いつ/痛むのはいつ?日中?朝?夜?持続的?間欠的?
より詳しく医師へ症状を伝えることで、片頭痛なのか他のタイプの頭痛なの診断がつきやすくなります。また、それにより対処法や症状に合った薬の処方が可能となります。
まとめ
秋に起こりやすい頭痛として、片頭痛についてお話を聞いてきました。
日本は地理的に気象の変化が大きく、特に季節の変わり目は自律神経が乱れやすい環境といえます。気象の変化はどうすることもできませんが、ご自身の体調を崩しやすい傾向を知り、天気予報を見て対処することは可能だということが分かりました。
自律神経を整える生活を心掛け、体が夏から冬へと適応していく時期を乗り切るようにしたいですね。