子どもの臍ヘルニア(出べそ)|疾患情報【おうち病院】

記事要約

いわゆる「出べそ」とは臍(へそ)部分がぽこっと突出したものをいいますが、状態によって「臍突出症」と「臍ヘルニア」の2種類に分けられます。

臍ヘルニアとは

※注 ここでは小児の臍ヘルニアについて説明しています。成人の臍ヘルニアは小児と異なり自然治癒することはなく治療が必要なため放置せず医療機関を受診してください。

いわゆる「出べそ」とは臍(へそ)部分がぽこっと突出したものをいいますが、状態によって「臍突出症」と「臍ヘルニア」の2種類に分けられます。一般的に出生後2週間ほどでへその緒は乾燥し脱落します。その過程で赤ちゃんと母体をつないでいた臍帯の付着部である腹直筋筋膜の穴(臍輪)も瘢痕となって閉じていきます。

この瘢痕部分がどういうわけか収縮せず、瘢痕組織が皮膚を押し上げて突出しているものを「臍突出症」といいます。臍突出症は外見だけの問題で機能的な問題がないため、気にならなければ治療の必要はありません。
一方、「臍ヘルニア」は臍帯が付着していた臍輪が瘢痕となって閉鎖せず、その穴から腸管が飛び出しポコっと膨らんだ状態のことをいいます。飛び出した腸管は皮膚に覆われているため破れる心配はありませんが、いきみや泣くことによって腹圧が上昇すると膨らみも大きくなります。膨らみは生後1ヶ月ごろから見られ、3〜6ヶ月ごろがピークのことが多いとされています。多くの症例では痛みなどの症状はなく、治療の緊急性がないため経過を見ることができます。筋肉の成長・発達に伴って1歳までに80%、2歳までに90%が自然治癒するといわれています。また圧迫療法といって綿球とテープなどを用い、膨らみを圧迫する治療法を行うことで、経過観察のみよりも自然治癒率が上がることが期待されています。圧迫療法ではテープかぶれなどの皮膚炎を起こすことがあるため、医師の指導を受けながら行う必要があります。1〜2歳になっても臍ヘルニアが治らない場合には手術を行い治療します。

臍ヘルニアの原因

子どもの臍ヘルニアの原因は、へその緒が取れて収縮していく過程で本来であれば瘢痕となって閉じていくはずの臍輪(臍帯の付着部)の筋膜が十分に閉じないことにあります。出生児のへその緒の処置方法とは関係がないといわれています。臍輪が十分に閉鎖しない理由ははっきりとはわかりませんが、新生児の腹筋が未熟であることや腹圧が強さなどが影響する可能性があります。

臍ヘルニアの疫学的整理

臍ヘルニアの発生は、新生児5〜10人に1人とされています。低出生体重児ではより起こりやすいと考えられています。白人での発生率は1.9%〜18.5%との報告があります2)。

小児の臍ヘルニアの多くは自然治癒(2歳までに約90%)することが知られており、3〜4歳ごろまでに自然治癒に至らなければ手術治療が推奨されています。

臍ヘルニアの治療

  • 経過観察
    臍ヘルニアは2歳までに約90%が自然治癒するため経過観察することがあります。
    自然に臍輪が閉鎖し飛び出していた腸管が元に戻った後も、伸びきった皮膚は元に戻らないため臍のくぼみが十分にできず、外見上いわゆる出べそが続くことがあります。ヘルニアのサイズが大きいほど、余剰皮膚による出べそが目立つ傾向にあります。
  • 圧迫療法
    臍ヘルニアの圧迫療法は、綿球やスポンジなどの材料で突出部を圧迫し、テープなどで固定する方法です。持続的に圧迫を続けることでより早期に臍輪が閉じ、余剰皮膚の問題も経過観察例と比べ少ないとされています。圧迫療法は生後6ヶ月以降の開始ではその治療効果が少ないと報告4)されています。
    問題点としては、テープかぶれなどによる皮膚トラブルが挙げられ、皮膚の状態によっては治療の継続が困難となります。圧迫療法は保険適用されています。
  • 手術治療
    手術の適応は経過観察または圧迫療法によってもヘルニアが改善しなかった場合で、1、2歳以降に行われることが多いとされています5)。
    また、ヘルニア自体は自然に治癒したが、余剰皮膚により臍のくぼみが十分できず、外見への満足度が低い場合も余剰皮膚を形成する手術が行われることがあります。

臍ヘルニア相談の目安

赤ちゃんの臍部分がぽこっと膨らんでいることに気づいた時に適宜かかりつけ医に相談するのが良いでしょう。また、1ヶ月健診、3,4ヶ月健診時に医師に指摘されることもあります。

<リファレンス>

  1. 日本小児外科学会 臍ヘルニア

  2. Umbilical hernia in children. Marinković S, Bukarica S. Med Pregl. 2003 May-Jun;56(5-6):291-4.
  3. 巨大臍ヘルニアに対する手術時期による臍輪収縮率の違い.
    佐伯勇、加藤怜子 、向井亘、今治玲助、秋山卓士. 日小外会誌 第52巻2号2016年4月p. 259-263
  4. 乳児臍ヘルニアの頻度と圧迫固定療法 の効果.平岡政弘. 日児誌、118: 1494-1501.  2014.
  5. 本邦における乳幼児臍ヘル ニアの診療方針に対するアンケート調査報告.大塩猛人、羽金和彦. 日小外会誌、47: 47-53. 2011